フェミニズムとわたしと油絵(2013~2023)(その16) 展覧会から2か月を経て
1 大阪市中の島中央公会堂にて10月15日(日)から19日(木)まで、「金谷千慧子のフェミニズム絵画展」を実施しました。日々嵐のような毎日でした。お忙しい中、訪れてくださった皆様への感謝の気持ちでいっぱいです。絵画の展示や会場づくり、受付、展覧会の当番に至るまで、手作りで支援して下さった皆様、本当にありがとうございました。1年以上にわたり、すべての過程を一緒に苦労してくださった宮本厚子さん(元和歌山県田辺市職員)に敬意を表し、深く感謝します。
2 私の場合には、NPOの代表理事を次の世代にバトンタッチして10年を経ました。80年代から盛んになり出した日本のNPO組織は、今やその活動を次世代に引き継ぐ時期に来ています。あふれんばかりの情熱で活動をスタートさせた私たち第1世代ですが、組織として継続するには、ビジネスとしての事業の成功や経営の安定が必要になります。次世代にどのように組織を引き継ぐのかは、今やNPOの大きな課題になっています。今回の展覧会事業は引継ぎを済ませたNPOの一つの見本になったかもしれないなと思います。そしてまたリタイアした先代の活動家がその後の人生をどう過ごしているのかを知る契機にもなったかもしれないと思います。
今までの情熱の延長線上で、しかし、まったく新たな分野で「フェミニズム」を標榜して油絵の世界を泳いできたのですが、NPO時代の「女性の労働とジェンダー」の課題が、油絵の世界でも同じように「フェミニズム絵画とジェンダー」の課題として横たわっていることが明確になりました。当たり前ですよね、根っこは一緒なのですから。女性が主人公になりにくい社会構造は、日本中、まだまだ岩盤のように強固で、崩れにくい状態のようです。しかし女性たちの活躍次第で、案外崩れやすくなるかもしれません。
3 今回展覧会を機に「フェミニズムとわたしと油絵」(明石書店刊)と題する書籍を出版しました。この書籍について、取材記事を出してくださった文化部(欄)の記者の方々は、これを文化論、絵画論として扱ってくださったのか、一人のフェミニズム運動の活動をしてきた女性の生きざまとして取り扱ってくださったのか、とても興味があります。
また書店では、どこの書棚に展示して頂いているのか、文化論、絵画論の棚なのか、ジェンダー論、女性論の書棚なのかも興味があります。書店では、紀伊國屋大阪本店書店は「芸術論」コーナー、紀伊國屋グランフロントは「美術評論」のコーナー、紀伊国屋新宿本店は「思想」欄(ジェンダー論)」です。両者の分野をまたぐような内容ですし、私は美術の専門的研究者ではないので、きっと困られたかもしれないなと思います。でも専門分野に専門分野以外のfeelingが大事なこともあります。図書館ではどうなのかなとも思っています。慶応大学図書館ではA367社会・労働・家庭の項目のようです。
4 私は芸術・美術の世界にこそ、NPOとしての活動が広がるべきだと思っています。「NPOは社会的な弱者をボランティアで援助するという活動」という趣旨からは、もうすでに完全に脱却しているはずですし、芸術家がNPOを担うのは重要だと思っています。美術館などに指定管理者制度導入されて、NPOがその経営を担うのも、ごく普通になりました。しかし創造・描き手そのものが、NPOの活動として絵を描くというケースは少ないと思います。自立できる芸術家、女性も生涯、アートの世界で生きていけるためには、経済的裏付けが重要になります。どうしたら生活と芸術が両立するのか、絵では喰っていけないといわせない体制づくりが必要です。そのヒントは、アメリカのNPOにあると思います。例えば、女性芸術家を対象とした多くの基金の存在や、非営利のNPOや財団に支えられている芸術家たちが、その仕事においては、厳しい市場の変動にさらされて、一つの産業として活躍している姿はとても参考になると思います。
芸術政策としての中央政府の助成金対策を待つだけでは、いつまでも「絵では喰っていけない実態」は解決しないと思います。ましてやジェンダー後進国の日本においては、「女性の芸術家」を応援する機運はまだまだゆっくりしているのではないでしょうか。
5 今回、展示したのが70点、特定の方にお渡しするために描いたのが33点、そのほとんどが家を出ていきました。家の中は空っぽになりました。
100点ほどの絵は、もらって頂いたそれぞれの空間で、ちゃんと納まっているかなーと気になっています。わが子の行く末が気がかりなように。もし喜んで頂いているのだったら、少し世界が広がるなーととても楽しみにしています。
6 書評や取材など
1)じんぶん堂書評 https://book.asahi.com/jinbun/article/15046261
2)女流画家協会ブログでの書評
https://blog.joryugakakyoukai.com/s/article1906879.htnl
3)産経新聞取材
https://www.sankei.com/article/20231216-57Y7RQOAJVJFVK6OFQH2VSXUL4/
4)毎日新聞取材 2023年11月6日阪神版/ 2023年11月21日大阪版
https://mainichi.jp/articles/20231109/ddl/k28/040/257000c (有料記事)
5)読売新聞取材 2023年10月6日夕刊
6)福井新聞(有料記事)https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1927575
7)書店の書棚
紀伊國屋グランフロント 美術評論のコーナー
紀伊國屋新宿本店 思想欄コーナー
紀伊國屋大阪本店書店 芸術欄コーナー
ジュンク堂大阪本店書店 人文フェミニズム・ジェンダーコーナー
MALZEN&ジュンク堂大阪本店書店人文フェミニズム・ジェンダーコーナー
ジュンク堂書店難波店 人文フェミニズム・ジェンダーコーナー
写真は産経新聞より
「フェミニズム絵画展」を開いた金谷千慧子さん=大阪市北区の大阪市中央公会堂
金谷千慧子さん著「フェミニズムとわたしと油絵」(明石書店)
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