「金谷千慧子フェミニズム絵画展」 オープニング・パーティ挨拶
1)みなさまこんにちは。
ようこそお越しくださいました。本当にありがとうございます。思えば、半世紀以上にわたって、とみに歩んできた、というより「走ってきた」の方が妥当かもしれません。その皆様方と、ここに再びお目にかかれて本当にうれしいです。
はじめに、このたびの絵画展に「フェミニズム」の名称をつけましたことについてお話したいと思います。

私は子どもの頃から「女は損ばっかり」が口癖でした。特に疎開先の北陸の田舎では女の子を「めろんこ」と蔑称で呼び、女の子は勉強ができても、運動ができても、「めろんこが黙ってれー」といわれて、それでお仕舞でした。ボーボワールのいう第2の性ですネ。いつも悔しかったです。
ところが現在の日本の男女平等を見てみますと、いまだに世界146カ国中125番目というジェンダー平等後進国なのです。私たちは、半世紀以上に亘ってジェンダー平等に向かって頑張ってきたのに、何の貢献もしていないのかと思うと、もう夜も寝られなくなることが多々ありました。
しかし私はもう反省しなくていいのだと思っています。なぜなら後輩の女性たちや男性たちが、ジェンダー平等に向かって大きく動いているからです。例えば日本ではエンタテーメント事業ジャニーズの問題での活動、外国ではイランの女性たちが、ベールを被らないことや女性の権利擁護について命がけで闘っています。そうです。今年のノーベル平和賞はイランのこのベールの運動をしているモハンマディさんに決まりましたね。彼女は獄中での受賞です。フェ三ニズムが前進すること、このことは私の体の芯からの願いなのです。
2) 10年前の2014年の春、NPOを次の世代に引き継ぎました。
今日はその引き継いでくれた諸田智美さんが越しくださっています。この10年で最も変わってしまったのは、耳が聞こえにくくなったことです。いくら補聴器を替えても、もう人数の多い会話は判読できません。また、今年2月脊椎館狭窄症、腰の手術をしました。これは夫の介護も原因しています。手術から半年以上を経てまだ完全には復活していないのですが、本日ご参加いただいています整形外科医の村上院長には、一方ならぬご尽力を頂き、なんとか回復しかけております。
それから油絵を再開して10年になりました。もともとゴッホが好きで、ゴッホの糸杉のように、絵の具をコテコテに塗りまくり、思いのたけを表現するというのが夢でした。思い切り表現したい、自分が、女性が、元気になるような絵を描きたいという気持ちです。
3) NPOをリタイア―してすぐ近くのカルチャーセンターの絵画教室に通いました。

楽しかったのですが、いつもモデルは女性で、ヌードモデルも頻繁にありました。「見られる女性と見る男性」「描かれる女性と描く男性」という構図がとてもしんどくなっていました。それからヌード絵画が高級な絵画「Fine Art」なんていうのは、19世紀のことだと思っていましたら、今だにそれが当たり前だったのです。女性の受講生は「ヌードも慣れの問題よ」「慣れたらなんともないよ」と慰めてくれますが、私は、この慣れて感覚が鈍感になるということが大きな問題だと思っています。私の場合は描き終わったらすぐに着衣の絵に変えてしまいました。(それがお手元の写真集の6頁4-1ショールを持つ女性で、これは変えた絵の一つです)。

それから人種差別・黒人差別の問題もあります。黒人の女性を描いたことがありました。写真集の表紙の絵です。これに「土人やな」といわれました。なんぼ何でも「土人」はないでしょうと抗議したことがあります。今思いますと、ピカソは天才などといわれますが、ピカソの黒人差別・女性蔑視に共通するものがあると思っています。
ピカソはアフリカの女性にキュービズムのヒントを得たといわれますが、黒人女性の顔や身体を、横から、正面からと切り刻んで複合させたような「アビニョンの娘たち」という有名な絵があります。以前はアビニョンの売春婦たちというタイトルでした。女性を切り刻んで平気という女性蔑視・女性への暴力、黒人差別が色濃く表れていると思うのです。今年ピカソ没後50年にあたります。「ピカソ天才」説だけでなく、フランスのフェミニストたちによるピカソ反人権運動が起こっています。
4) フェミニズム・アートはアメリカのフェミニズム運動から発展しました
そして世界に広がっていきました。女性が、表現者としてアートに参入することにより、アートの枠組みそのものが変っていきます。例えば美術館の展示の方法や、絵画指導者や審査員の選定なども変わっていきます。フェミニズムは、アートの枠組みだけでなく社会の枠組みをもチェンジしていきます。フェミニズムは、多様で個性的で自由な社会の創造を目指します。
今回の展覧会に、「フェミニズム」を付けましたのは、フェミニズムがみんなのものになってほしいという願いがあります。いまだに「フェミニズム」というと一部の女性の権利拡張行動だとして毛嫌いする向きがありますが、「男女平等」・ジェンダー平等、多様性を実現するには、女性も男性も一人ひとりが変革への行動を担うことだと思います。変革を担う女性と男性になろうと呼びかけたいと思ったのです。
5) 最後に、今願っていますことは…
一緒に歩んできた皆様に、「お礼の気持ち」を込めて油絵をもらって頂きたいのです。
NPOがスタートし始めた頃、財政的にも、実力でも、未熟な「女性と仕事研究所」を「女性のために頑張っているんだ」と信頼して、応援してくださった皆様、ほんとにうれしかったのです。そのお礼の気持ちをなんとか伝えたいと思い、つたない私の絵ですが、一生懸命描きましたので、もらって頂きたいと願っています。
これからも新しい気持ちでまた絵を描いていきます。ただこれから先、どの位描く時間が残っているか分からないのですが、もう少しだけが頑張りたいと思っています。
本日は本当にご参加ありがとうございます。
