配偶者控除及び年金第3号被保険者の廃止を求めます

      2014/10/23

パートとフルタイムの均等待遇と基礎控除を増やすこと

配偶者控除廃止か

税制には女性の就労拡大を阻む「103万円の壁」が、社会保険制度には「130万円の壁」があるといわれてきました。このたび政府は廃止に向かうと報道されています。ただ、配偶者控除を廃止すれば税収増が1兆円見込まれるという税対策として語られるとしたら、それは、女性たちが長らく待ち望んできたことではありません。

年収103万円は、実際にはパートで働く「非課税限度額」となっていますから、限度を超えない働き方をする場合は、パートの収入もこれが限度となってしまいます。賃金体系を、仕事に見合う報酬体系にし、パートとフルタイムの均等待遇(均衡ではなく)をまず確立することが最初に必要なことです。賃金だけではなく休暇、職業教育など労働条件すべての均等待遇が必須です。それから保育所・学度保育の整備をはじめとして、子どもの育つ環境を豊かに整えるために、働くひとりの基礎控除は100万円程度は認めてほしいものだと思います。

いつの間にパートの年収限度額になってしまったのか

さてこの所得税の配偶者控除は昭和61年にできたものですが、家事に従事している女性に税制面から配慮するもので、妻の給与収入が年間103万円以下なら夫の所得税で38万円、住民税で33万円が課税所得の対象から差し引かれるのです。

昭和61年(1986)といえば、先進諸外国では女性の就業拡大に足かせになると、配偶者控除をすでに廃止した時期に、日本では設けられたのです。スウェーデン1971年廃止、アメリカ1946年廃止などです。ときあたかも日本ではパートタイム労働を「主婦労働」という呼び名で、女性たちをパートに駆り出していったころです。

主婦の再就職は、103万円以下のパートで、時間給・雇用期間つき、という低賃金就業構造がスタートしました。この金額は到底自立できないものですが、家計補助をするかわりに夫の税金をちょっとまけてあげようというものです。また老後は夫の看護・介護が終わって一人取り残されたなら、比較的有利な第3号被保険者として夫の年金を遺族年金として受け取れますよというようにしたのです。女性を夫という一人の男性につなぎとめておきつつ、低賃金で日本経済をささえてほしいというこの政策は、働く女性と専業主婦の分断を招きかねないことにもなり、現状ではパートで働く女性の就業調整につながり、目いっぱい働くことを自粛するという自己規制になっています。これでは、女性が中核人材として活躍してほしいという政策とは一貫性がなく矛盾しています。

だからこの古い制度の廃止は長らく、女性たちが望んできたものでした。

今後年金、介護、医療などは男女ともに同じくらいの金額が必要です。高度成長期には人口成長と収入増で男性のみの納入額で国のこうした社会保障制度は破綻しませんでしたが、現在では男性だけの働きによる納税額では全く足りなくなっています。みんなで支えあう制度に変えねば成り立ちません。それには、税制や年金制度は働き方に中立でなければなりません。市場をゆがめ、女性がわざと時間調整や時給調整をせずには働き、経済成長を高め、税収を払い年金保険料の収入を高める制度に変えねばならないわけです。

主婦の再就職センターからスタートして

私はもともと主婦の再就職を支援するという活動からスタートしました。1985年のことでした。そのころには「夫の給料はどうなるかわからない、交通事故?リストラ?」「子どもの教育費がかさむ」、「私だって結婚前まで働いていて生きがいがあったのに、もう一度働きたい」などの声が再就職へと向かわせました。でも実際には「年齢制限が30歳で、正社員はもうない」、「一般事務しかできない」「何よりも保育所がない」「パートの報酬より保育料のほうが高い」などなど現状は厳しいものでした。

女性も懐(ふところ)に札束がほしい

あれから30年、パートは2000万人を突破し、特に女性では6割以上がパート(非正規)(平成23年厚労省調査)のまま、社会の基幹労働者となっています。しかし、103万円の壁や賃金水準はそのままです。ようやく女性の活躍推進が叫ばれるようになりましたが、もうこれからは、「だまし取り」や「ただ取り」はだめです。いまや女性にとって「仕事」はライフラインです。もっとも大事なことです。税金も年金も支払い、子どももいる生活から社会的豊かさが築かれます。

女性と再就職の講演で、私がよく叫んでいた言葉は次のようなものでした。

「右手に仕事、左手におとこ、背中に赤ん坊、懐に札束、どうだ!」

女性たちはウフフ・ウフフと喜んでいました。当たり前だ!そうでしょ!

(1993年刊)

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