2024年秋 世界中で選挙の季節、日本の場合 衆議院議員選挙(第50回)と「選択制別姓結婚」制度、「103万円問題」「戸籍制度」、「皇室典範」のこと (その2)
衆院選(定数465)は連立政権を組む自民党と公明党で過半数(233議席)を確保できなくなった結果、連立政権構想が動いています。しかしどうして野党間で連立政権がつくろうとしないでしょうか。政権をとる覚悟がないのかと不思議でなりません。野党の位置に居ることが政治家としての目標ではないはずでしょうに。
若者の所得を増やす政策?
そして今、早速に起こっているのが103万円問題。主張者の国民民主党は「若者の所得を増やす」と言っています。学生アルバイトの収入も同じ構造ですが、学生の場合には、年収が130万円までであれば「勤労学生控除」で所得税の発生を抑えられますし、社会保険の加入も免除されます。親の収入が低く、家賃や生活費を自身でまかなっている学生ならば、103万円、130万はあまり気にしなくてもいいはずです。103万円は女性労働問題なのです。若年者に限りません。非正規雇用の労働者(アルバイト、パートタイム労働者など)が直面する年収の壁です。日本のパート比率は女性が52.9%、男性で25.3%です。世界に恥ずかしい男女の格差賃金の元凶であり、女性が男性に扶養されるという前提の賃金構造が女性の103万円以下の低賃金を押し付けてきました。
壁はさまざま、103万円、106万円、130万円、150万円、201万円の壁
壁は103万円だけではありません。103万円を超えると、収入に対して所得税が課税されますし、また親や配偶者の扶養から外れます。ここでいう扶養とは、税制上の扶養のことです。親が受けていた扶養控除の適用がなくなることで、親の税負担が増加します。配偶者の扶養に入っていた場合は、配偶者控除や配偶者特別控除がなくなるため、配偶者の税負担が増え、家計としての総収入が減ります。年収106万円を超えると、社会保険への加入が義務付けられます。加入は拒否できないため、社会保険料を負担しなければなりません(2024年10月から従業員51人以上の企業)、さらに130万円を超えると、配偶者などの扶養から外れて、国民年金と国民健康保険に自身で加入し保険料を払います。自分の年金を獲得する基準になります。また150万円を超えると、納税者本人が受ける配偶者特別控除の金額が減額されます。さらに201万円の壁を超えると、配偶者特別控除の適用が完全になくなります。納税者本人の税負担が増えます。しかし、収入が増えることは大きなメリットです。103万円を超えて働くことで、これまで以上に業務の幅を広げ、スキルを磨く機会も増えます。積み上げた経験は、将来的なキャリアアップにも役立つでしょう。優秀な実績を残せば、昇給・昇格の道もつき、さらなる収入増が見込めます。年金で老後の経済的自立の道が確保されます。
壁をなくすことは企業もメリット
従業員が、壁を意識することなく、思い存分働くことは、企業にとっては人材確保と定着面での効果があります。最も低いボーダーライン「103万の壁」を超えるには、女性側にも自立への大きな決心が必要ですが、企業においても、女性の自立心の欠如を利用して、人件費の安上りをめざすのではなく、女性の働く意欲を向上させ、人材確保や人材定着を確保しましょう。「より多く働きたい」など、モチベーションが高い人材が確保できることで、生産性の向上が期待できます。企業の社会的価値も高まることでしょう。
年収の壁を意識している短時間労働者の割合
さまざまな年収の壁がありますが、実際に短時間労働者はどの程度意識しているのでしょうか。2021年度の「パートタイム労働者意識調査」によると、配偶者がいる女性パートタイム労働者のうち、21.8%が就業調整をしています。
就業調整をしているパートタイム労働者のうち、103万の壁を意識していると回答(複数回答)した割合は、全体で46.1%、配偶者がいる女性では49.6%と高い値となりました。また、一定額を超えると社会保険に加入しなければならないことを意識して就業調整をしている女性が57.3%いることもわかっています。
女性たち、立ち上がれ
さまざまな壁をなくし青天井で働こう!現役時代の賃金額で、老後の年金額が決まってきます。老後を自分の年金で暮らせるように、男女平等賃金をめざして、幾つもの壁を突破しよう。ここは頑張りどころです。103万円の控除額は1995年から30年近く据え置かれたままで、女性差別、男女賃金格差の重石として続いてきたものです。国民民主党のいう引き上げ幅の75万円はこの間の最低賃金の上げ幅(1.73倍)に合わせて算出した限度額だそうですが、これも壁の高さを少し変えるだけで、壁を崩すことではありません。野党間でともに検討しあって、すべての壁を崩して下さい。いいチャンスです。女性たち、青天井で働こう!「扶養」の枠を抜け出そう。
主婦の再就職センターを始めた頃
1985年の「国連女性の10年」ナイロビ世界大会から帰ってすぐに、「主婦の再就職センター」の活動をスタートさせました。女性が子育てなどで仕事が続けられなかったとしても、再度仕事に(以前の仕事でも、新たな仕事でも)就けるような支援活動をしようと思いました。「人生何度でもやり直せばいいじゃないの」という気持ちでした。
主婦の再就職センターの通信
1991年7月発行
第4回「主婦の再就職準備講座」プログラム
1991年2月6日~3月27日 場所 大阪府立婦人会館 協力:NEC
再就職センターの活動に、諸外国(アメリカ・カナダ・フランス・イギリス・オーストラリア・ニュージーランドなど)の「コミュニティ・カレッジ」(名前はさまざまですが)を訪問して歩きました。人生のやり直し、新しい仕事のスキル確保のために、再度職業教育を受けられる教育機関が必須だと痛感していました。
例えばニューヨーク市内には4つの大型コミュニティ・カレッジがありました(学生は1万人以上)。ニュージーランドでは、540万人口に23か所のPolytechnic(ポリテックニック)といわれるコミュニティ・カレッジが女性たちの再就職を支援していました。
ニューヨーク市
ラガーディア・コミュニティ・カレッジ
日本にも仕事や人生のやり直しのために、コミュニティ・カレッジが必要だと感じていました。今もそう思っています。国がコミュニティ・カレッジを制度化しないのなら、NPOとして実施する方法はないのかと悩んでいた時期もありました。日本における女性パートタイム労働者の待遇が悪すぎるのは、再就職の教育制度が皆無だというところに大きな原因があると思っています。
ちなみに、アメリカ大統領ジョー・バイデンの妻ジルさんは、アメリカで2番目に大きいコミュニティ・カレッジの教授です。地域(コミュニティ)の人に、できるだけ安価で大学教育と職業訓練を提供するのがコミュニティ・カレッジは、成人教育や生涯教育にも力を入れています。フェミニズム・プログラムも揃っています。いつでも、どこでも、だれでも、安価に、再職業教育が受けられるという基盤が整っているのです。
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