ニート問題にジェンダーの視点を
2014/10/23

撮影:吉岡理夫(元朝日新聞社 記者)
ニート(NEET=Not in Employment, Education or Training)対策が話題となっています。この言葉は、1970年代にイギリスで生まれました。日本ではフリーター(正規社員として働かない)、パラサイト(親に寄生して生きる若者)に続くカタカナ語です。欧米諸国は1970年代から、小・中・高校、高等教育でのキャリア教育の充実、アウトサイダーになった若者への特別の支援を、若年者の失業対策と位置づけました。「仕事に就けない状態が6ヶ月以上にはならないようにする」というのが原則のようです。
今年3月3日、ニート対策シンポジウム(会場は、ワッハ上方というお笑いの本丸)のコーディネーターを務めました。準備期間中からニートの研究をし、今、シンポジウムの報告書を書き上げたところです。その間ずうっと、気にかかることがありました。それは、わが国の労働政策担当や政治家は、ニートは問題だといいながら、女性が満足に働けていない現実には、全くの関心がないのではないかと思われることです。女子学生が就職できなくても「家事見習い」(結婚を待っている)として、また34歳までの専業主婦は働く意志なしとして、失業者やニートの枠からはずされています。これは、女性は働くのは結婚まででいい、もしそれ以外の年齢層で働くならパートタイム労働で、ということです。女性のパートは35歳から激増します。日本のパートタイム労働は「不安定で、賃金が極端に安く、能力が発揮できない、年金もなく自立できない」という、他の先進諸国ではあり得ない状況です。
若年男性が就職しにくいということで、やっと従来の製造業中心、男性社員中心の終身雇用体制に代わり、教育から職業への適切な移行方法を創り変えなければならない、という決意はできたようです。このときこそ、「女性が働けない」という実態に目をつぶるのではなく、女性も男性も働いて生きるという人間として当たり前のことを当然のこととする労働政策、職業教育・キャリア教育施策が実現されなければなりません。
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