「202030」また、断念! どうしてこうまで遅いのか コロナ後の働き方を考える(その2)

   

暑中お見舞い! コロナお見舞い!申し上げます。

もうすぐ「アフターコロナの時代がやってくる」と思ったのになんのその、このウイルスの粘り強いこと、感染拡大は収まりません。しかし自粛期間に進んだテレワークは、今までの「仕事はオフィスでしかできない」という慣習をかなり変えたように思います。オフィスで就業時間を過ごすのではなく、「仕事」を完遂することに力点を置くテレワークの長所がかなり見えてきたのではないでしょうか。その一つが時間単位の就業・報酬が特徴の「パートという非正規労働」を考え直すという発想です。しかしその前提として男女の賃金格差の是正や、男女平等の昇進などの世界的合意が整はなければなりません。ところが、・・・

「202030」

政府は、7月21日、2020年までに「指導的地位」における女性の割合を30%にするとした「第4次男女共同参画政策」の目標達成を断念した、と発表しました。「あらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」という5年間計画で、民間企業の課長職に占める女性の割合も15%とすると定めていました。「202030」と大々的に謳ってきたのです。しかし、この計画、そもそも、1985年にナイロビで開かれた第3回世界女性会議で、各国に2000年までに、指導的地位の女性を30%とすると決めたものです(ナイロビ将来戦略勧告)。ナイロビ会議から5年後の1990年には、国連の経済社会理事会は「ナイロビ将来戦略勧告」を採択し、各国に実施ペースを速めるよう要請しました。それからでも30年。世界の流れと比較しても、どうしてこうまで日本は女性の活躍が進まないのでしょうか。

現在日本の女性の地位は、世界でも最低水準なのです。世界経済フォーラ(WEF)は12月17日、世界各国の男女平等の度合いをランキングした2019年の「ジェンダー・ギャップ指数」を発表しました。調査対象153カ国のうち、日本は121位と前年(110位)からまた順位を落とし、過去最低となりました。女性の政治参画、と経済的な地位の遅れが響き、先進国では最低水準となっているのです。アジア諸国のなかでもとても低い水準です。

ナイロビの風

35年前のあの日、ナイロビ大学で開催された国際会議(NGOフォーラム)に筆者も参加していました。ホテルが一杯で私たちは、ナイロビ大学の学生寮に泊まっていました。机とベッドだけの簡素な部屋でした。朝はとても涼しく、鳥が鳴いて紅い花をつけた大木のブーゲンビリアが風に揺れていました。政府間会議は157ヵ国、7月10日、ケニヤッタ国際会議場での開会式は3千人を超す女性たちの熱気であふれました。アフリカの女性たちの歌と踊り、その野太い声、おびただしいビーズの飾りが揺れます。ああみんな頑張ってきたんだ、と感動・・・。政府間会議は157ヵ国、NGOフォーラムには約1万5千人(日本からは700~800人)が参加しました。私たちは、ワークショップ「日本の働く女性の今」というテーマで実施しました。男女の賃金格差や女性管理職が少ない問題、保育所がないことなどを練習に励んだ英語でなんとかやり遂げました。その時から35年経ったのですが、日本の働く女性の環境は、1985年当時と大きな変化はないと思うのです。1985年のナイロビ将来勧告(あらゆる分野で指導的立場の女性を30%)は実現できなかったのですから。ワークショップ配布資料 ワークショップの様子 (中央筆者)

確かに労働者人口は大よそ2倍ぐらいになりました(1985年1548万人、2018年2937万人(2019年女性の就業人口では3003万人になりました)。しかし増えた労働人口は非正規です。それも精鋭の戦力パートとして、です。男女の賃金格差は解消されず、待遇はよくならず、女性活躍などという耳障りのいい言葉で、労働力として、戦力のコマとして国の経済力を引き上げる役割を果たしてきました。擦り切れんばかりに頑張ってきたのです。女性の貧困化がますます進んでいます。パートを掛け持ちしているシングルマザーの労苦はその典型例です。

アフターコロナの働き方として、戦力パートの働き方だけはやめましょう。

なによりもテレワークがコロナで定着しかけているおりから、職場に終日張り付いていることだけが仕事ではないと明白になっているのですから。

「終日、生涯会社で過ごす」正規と「ある時間を会社で過ごす」パートという就業形態の分離で、待遇が決定するのは現在の分類には無理があります。そうではなく、どんな仕事をどのようにしているかという仕事単位で評価を定めるようにしなければならないと思います。仕事単位の評価には、「同一労働同一賃金」が明確に守られねばなりません。仕事(ジョブ)以外の「性格がいい」とか、「気が利く」とかなどは評価には削ぎ落とさねばならにと思います。

「202030」の30%目標は、国際社会では1990年に、1995年を目途として設定されていたのでした。あれから30年。許しがたい怠惰だと思います。

女性活躍を掲げる安倍政権なのに、「202030(にいまるにいまる)」、あっさり先送り。やる気も国際感覚も欠く男性支配政治。と、朝日新聞夕刊は7月22日付けで言い切っています。

 - 女性と仕事, 女性と政治, 女性と政策, 女性の活躍, 海外事情

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