やっと「紙とハンコ」から解放されるのでしょうか コロナ後の働き方を考える(1)
2020年6月19日、政府(内閣府・法務省・経済産業省)からハンコについての見解が出ました。この発表によれば、「民間の契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない」とあります。民間の契約書にハンコは不要だ、効力に影響がないということです。内閣府は民間企業のハンコについて「テレワークの推進の障害となっている」とし、見直しに向けて取り組みを促したいとしています。
筆者もハンコは全く不要だと思う一人です。その理由は、この「紙とハンコ」が日本の働き方をとても不自由なものにしてきたと思うからです。一つは日本的雇用慣行(「長時間労働」「終身雇用」「年功賃金」「企業別労働組合」という特徴を持つ男性中心主義の雇用慣行)の基盤になっていると思うのです。2つ目は、職場の女性差別を助長するものだと思うのです。ハンコを押す管理職=男性という企業風土を醸成しがちです。
日本人を長時間労働と机に縛り付けてきた「紙とハンコ」
日本的雇用では一枚の書類に階層別のハンコが並ばないと書類は完成しません。部長、部長代理や部長補佐、さらに課長、課長代理や課長補佐、係長、班長などなどのハンコです。それぞれの階層別の会議はそれぞれの日程で企画されているので、1枚のPAPERにずらりとハンコの列ができるまでに2か月以上の日数を要することもあります。これでは、仕事が進まないはずです。長い会議時間、長い拘束時間、残業が当たり前の長時間労働が出来上がっていたのです。だから長時間企業にとどまることが前提の世界では女性が割り込むことを阻止し、排除するのは簡単です。しかし、今や企業のこのハンコ習慣はデジタル化、ペーパーレス化の波で不要のものになりつつあり、政府はこの度のコロナ禍の影響で、ハンコ企業の圧力を何とかかわし民間の契約書にハンコ不要を決定したわけです。でもこれは民間企業同士の場合ということですから、公的機関に関してはまだまだ粘るのでしょうか。
ハンコは原則、ファミリーネイム(姓)を刻む
ハンコは原則、ファミリーネイム(姓)を刻むものであり、夫婦別姓が原則でない日本では、本人を確定できるものではないと思うのです。少ない比率の女性管理職が責任ある立場でハンコを使用する場合でも、夫と同じ姓のハンコであり、個人を特定することにはならないとわけです。女性の管理職が極端に低い日本(ILO2016調査:日本の課長以上の女性管理職比率は11.1%で世界96位)では、それは職場での女性のポストの低さを物語るものでもあります。いままで、管理職はほとんどが男性だけでしたから、男性の姓を彫り込んでいるハンコだけで間にあってきたのですが、これは、とりもなおさず、男性中心の雇用慣行、男性中心主義の家族観が日本的企業風土を作り上げてきたのです。
夫婦別姓が原則ではない日本では、共働きでも男性の姓だけを記すことになります。台湾でもハンコ制度は存在するのですが、夫婦別姓だし管理職に女性が多く、姓名両方をハンコに記すのです。
私の場合は、ハンコを必要とした現役時代はいつもフルネイムのハンコを使っていました。そうでなければ自分ではない感じがします。
このコロナ禍のもと、テレワークが進まないことをきっかけに、日本人は150年ぶりに、机にへばりついていれば仕事をしたことになる仕事の仕組みから解放されるのか。そしてどんどん増える女性の管理職が夫の姓でない自分の署名で書類にサインし、仕事をスムーズに動かしていくことになるのか、まだまだ疑念はありそうです。
政府におけるハンコ担当大臣竹本直一(たけもとなおかず:1940生、大阪府衆議院議員当選8回)氏は、パソコンを触ったことがないパソコンオンチとか。ところが担当部署は、情報通信技術(IT)政策担当をはじめ、クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策などなど最新テクノロジーを要する部署ばかり。そしてハンコ業者の守り神、「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(はんこ議連)の会長も務める方です。さあこれからどうなりますか。
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