NHKクローズアップ現代「職業訓練で雇用を生み出せ」を観て
2014/10/23
2011年5月19日(木)NHKクローズアップ現代「職業訓練で雇用を生み出せ」を観ていました。インターネットでの反応は大きく、ツイッターにも多く話題になっていました。
番組ではデンマークの職業教育制度が紹介されていました。モビケーション(mobility+education)=移動のための職業教育という言葉に象徴されるように、日本のように終身雇用が理想ではなく、何時でも誰でも労働移動ができることが原則になっています。また日本では職業教育がビジネスとして私企業(専門学校)で多額の費用を個人が払って行われるのに対して、紹介されていたデンマークでは、公が失業保険を長期化させない(4年)ことを目標に全面的に職業教育をし、国家資金を投入して就職につなげようとしています。その現象を「デンマークって安心できるいい国だなー」というインターネットでの感想が多かったように思います。次の日、授業で話した学生の感想文にも「日本の大学は職業教育をまったくしない。だから2年もかけて就職活動をして、100社以上の面接を勝ち抜いてどこかの企業に入っても何となくなじめない」とか、「再就職はパートばかりという現状に職業教育をしてくれるところがあったらいいのに」というのがありました。
「いつでも誰でもどこでも仕事で生きる」(シングルマザーでも)ことを大原則としている国はデンマークだけではありません。デンマークをはじめとするスウェーデン、フィンランド、ノルウェイなどの北欧5カ国だけでもありません。オーストラリア、ニュージーランドなどもそうですし、EU諸国をはじめ、新しい産業を開拓し、女性も男性も平等に労働力として仕事で人生を築き、国を支える(労働に応じた税金を払い個人で年金を確保する)ことを目標にしている国では、一回切りではなく、何度でも仕事人生のやり直しがきく制度を確立しています。アメリカもそうです。ほとんどの国では、日本のようにさまよっている状態は脱しています。
クローズアップ現代が問題提起していたように、日本で正社員の雇用保険を財源とする在職者中心の教育訓練(一部基金訓練として離職者に及んでいますが。「くんれん」:このひびきの古めかしさ!)はもう変わらねばならない。具体的な指摘では、今の訓練プログラムは現状の雇用に繋がらない(雇用がなくなっているのに新産業創出のスキルは教えない)とか、企業が求めるのは実践の経験者で、プログラム修了者というだけでは難しいとか、地域のニーズに合ったプログラムの検討をする場が必要だという指摘がありました。
国や中央で一括して机の上で考える職業教育プログラムではなく、職業教育支援者(公務員とは限らない)と企業と自治体が頭を合わせてニーズを細かくすりあわせながら、教育手法も含めて工夫し、企業への就職を実現し、あたらしく創出した産業(環境・新エネルギー産業・介護など生活産業)に起業したり、雇用創出できるよう支援する仕組みづくりが必要です。一日も早く。東日本大震災を契機に実施すべきはここではないでしょうか。
ただその前提に、最も重要なことは、パートや派遣とフルタイムの均等待遇の原則(「同一労働同一賃金・同一価値労働同一賃金原則」)が当たり前にならねばならないのです。つまり男女や雇用形態別の格差賃金、労働条件が許されては話しになりません。そして一方で安全網が充実し、正職員のみならず失業給付があり、職業教育制度がコミュニティのすみずみまで格安で普及しなければならないのです。今の職業相談人や職業教育指導員がそのままで、任に当たれるかどうかも疑問です。
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