2024年秋  世界中で選挙の季節、日本の場合 衆議院議員選挙(第50回)と「選択的別姓結婚」制度、「103万円問題」「戸籍制度」、「皇室典範」のこと (その3)

   

国連女性差別撤廃委員会は日本に夫婦別姓の導入を勧告。皇室典範の改正も


朝日新聞デジタル2023年9月11日、スイスのジュネーブの国連欧州本部=ロイター

女性差別撤廃条約の実施状況を審査する国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本政府に対する勧告を含む「最終見解」を公表しました。選択的夫婦別姓の導入(4回目の勧告)や、個人通報制度を定めた選択議定書の批准を求めたほか、「男系男子」が皇位を継承することを定める皇室典範の改正を勧告しました。日本は家父長的な固定観念が背景にあり、世界の流れに逆行していると女性差別撤廃委委員会は警告しています。衆議院議員選挙の時節と重なっていたこともあり、「選択的夫婦別姓結婚」や女性天皇誕生について大きなテーマになっています。日本の家父長的な女性差別の根源に「戸籍制度」がありますが、すべての国民を戸籍筆頭者(以前は戸主といい、基本は男性)を中心にまとめて、徴兵制や税の徴収などで管理しやすくしてきたものです。戸籍制度の頂点に天皇制があります。

女性の人権に関する「世界の憲法」とも言われる「女性差別撤廃条約」は1979年に国連で採択されました。女性への差別を定義し、家族関係など私的領域や政治的、社会的、経済的などあらゆる分野で女性差別を撤廃するよう求めています。現在、日本も含めて189カ国が締約しています。日本は1985年に批准しました。当初、政府は批准に消極的でしたが、女性団体をはじめとする大きな運動もあり批准に至りました。批准のために1985年、男女雇用機会均等法が制定され、国籍法が改正、家庭科の男女必修が実施されました。批准後は、国連の女性差別撤廃委員会が、締約国に関する懸案をもとに質問のリストをつくり、それぞれの政府はリストに基づいて国連に報告をするシステムになっています。NGOからの情報提供や、政府への対面の審査を経て、勧告を含む最終所見が出されます。日本への審査は直近では2016年に行われましたが、そして、このたび、2024年10月、対日審査の結果として、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正を勧告しました。さらに、皇位継承における男女平等を保障するため、女性天皇の皇位継承を認めていない皇室典範の改正を勧告しました。
日本が夫婦別姓導入の勧告を受けるのは、2003年、2009年、2016年に続いて4回目です。審査委員は「女性のほとんどが夫の姓を名乗っており、アイデンティティーや企業活動に悪影響を及ぼしている」と指摘しています。そして委員会は最終見解で民法改正を求め、前回2016年に続いて、最も重要な「フォローアップ項目」に指定しています。世界広しといえど、夫婦同姓を強制している国は日本しかないのです。すでに30年以上、調査され、議論がされながら、なぜ日本では選択的夫婦別姓が実現しないのでしょうか?そこには戸籍制度こそが日本独自の「家族」のかたちを決めているのであり、戸籍制度に手を加えることは「家族」の破壊につながるという家父長的な女性差別を重視する古い人たちの根強い抵抗があるのです。

経団連が「選択的夫婦別姓」導入を求める提言(2024年6月10日)
経団連は、夫婦別姓を認めない今の制度は、女性の活躍が広がる中で企業のビジネス上のリスクになりうるとして、政府に対し「選択的夫婦別姓」の導入に必要な法律の改正を早期に行うよう求める提言をまとめました。夫婦別姓を認めない今の制度は、女性の活躍が広がる中で、海外でのビジネスなどに支障が出かねるなど、企業のビジネス上のリスクになりうると指摘しています。政府自民党の別姓反対の見解は、企業の「選択的夫婦別姓」推進意見にどう応えるのでしょうか。通称使用を拡大するという自民党案ではどうにもならないというのが企業側からの主張なのですが。
この経団連の意見には大きな反響があり、女性はもちろん、経営者や若者など幅広い層の男性からも「経団連、よく言ってくれた」と賛同の声が多く寄せられているそうです。ほとんどの企業では通称使用はもう当たり前ですが、それでもパスポートなどには、不便であるというのはワーキング・ウーマンの当たり前の気持ちなのです。人口の半分を占める女性が不便なく働ける職場に早くなってほしいものです。

個人通報制度を定める「選択議定書」の批准を
差別撤廃委員会の勧告では、人権侵害された個人が国内で救済されない場合に国際機関に訴えられる個人通報制度を定める「選択議定書」の批准も求めています。これは差別撤廃条約の実効性を高める狙いがあり、条約の締約国189カ国のうち115カ国が批准していますが、日本は批准していません。

私と女性差別撤廃条約
私が女性差別撤廃条約を知ったのは、1980年第2回国連女性会議(コペンハーゲン大会)でした。大阪府では女性の国際理解を深め、国際交流を進めるため1980年から女性の海外派遣事業を始めました。その第1回のコペンハーゲン大会・NGO大会に私も参加し(25人)、「女性差別撤廃条約」の文面をそこで初めて知りました。女性の地位向上をめざして頑張っていた人たちは、すでに条約のすごさを熟知しており、批准に向けての活動をしてのですが、出遅れ気味の私もようやくこれは女性にとってのものすごい道しるべ(道標)なのだと知ることになります

国連の婦人の地位委員会は、1972年に国連憲章・世界人権宣言・女性差別撤廃宣言(1967年)を踏まえ、新たに男女平等に関する包括的条約を採択する必要があると決議し、1974年から起草に着手、6年をかけて1979年12月18日女性差別撤廃条約の採決を実現しました。これは、1791年のフランス革命でのオランプ=ド=グージュの「女性および女性市民の権利宣言」以来、長い歳月をかけて、はじめて成立したものといえます。この条約は1981年に発効、日本は1985年に批准しています。
差別撤廃条約11条には「働くことは人類の譲り渡すことのできない権利である」と、女性の働く権利を明記しています。 私には、特にこの項目がうれしくて、もう涙がとまりませんでした。「仕事で活躍したい、結婚や子育てで仕事を辞めたくないという気持ちを分かってほしい」「わがままね」「悪い母親ね」と言わずに応援してほしいとどれだけ切実に思ったかしれません。女性が働くことを世界で認めてくれていることが、ほんとにうれしかったです。今まで家族に申し訳ないと謝ったり、お礼を言ったりの毎日でした。特に子どもが熱でも出そうものなら、もう仕事を辞めるかどうか、悪い母親にはなりたくないし、との葛藤で苦しかったのです。だから私もこの条約を広めよう、批准活動のために私も参加しようと決意していました。この批准活動やその後、国連へ出向いては調査結果を届ける活動を続けてきた団体を紹介したいです。

ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN) http://wwn-net.org/
1995年、住友男女賃金差別裁判をサポートすることをきっかけに結成され、裁判が勝利和解した後も、働く女性の地位向上を求めるNGOとして、活動を続けてきた団体です。コース別制度など間接差別をなくすこと、同一価値労働同一賃金を法律に明記し、ジェンダーに中立な職務評価を確立するNGOとして活動を続けています。働く女性の実態を国連やILOに訴え、国との省庁交渉などで法律の改正にも取り組む活動を今も続けています。バイタリティあふれる女性たちです。
時代錯誤!政府の「差別撤廃委員会」への反論!
国連の女性差別撤廃委員会が女性皇族による皇位継承を認めていない皇室典範の改正を勧告したことについて、日本政府では時代錯誤の反論が起きています。内閣官房長官 林芳正官房長官は10月30日の記者会見で、「大変遺憾であり、委員会側に強く抗議し、削除の申し入れを行った」と明らかにしました。林氏は「皇位継承のあり方は国家の基本に係る事項であり、女性に対する差別の撤廃を目的とする女子差別撤廃条約の趣旨に照らし、委員会が皇室典範について取り上げることは適当ではない」といいました。
日本政府は時代錯誤です。日本は民主主義に基づいて「天皇制」が定められています。大日本帝国憲法(1889年)の時代ですら、「天皇は国家を構成する要素の一つにしかすぎず、天皇はその一機関として統治権を行使しているだけ」だとする天皇機関説(1912年美濃部達吉氏)が打ち出されていました。そのころ天皇は神であり、国家のありとあらゆる統治権を持つと考えられがちでした。大日本帝国は万世一系の天皇が統治する(第1条)、天皇は神聖であって、侵してはならない(第2条)といった天皇の権力政治が行われてきたのです。天皇制に物申すのは許されないことでした。もうそんな時代でないのは、天皇機関説を持ち出すまでもなく天皇は憲法上の一つの機関です。国家には天皇も含めて様々な機関があり、様々な機関が協力・連携しあってこそ、前進が可能なのです。様々な機関の中で大きな位置を占めるのは国民であり、国民の代表者が議会を構成し、統治の主要な機関となっています。天皇制の在り方を決めるのは国会です。選挙結果です。
国連女性差別撤廃委員会も皇室典範については、最終見解は「委員会の権限の範囲外であるとする締約国の立場に留意する」としつつも、「男系の男子のみの皇位継承を認めることは、条約の目的や趣旨に反すると考える」と指摘し、「皇位継承における男女平等を保障するため」、他国の事例を参照しながら改正するよう勧告しました。当たり前のことではありませんか。早速、議論を始めるべきです。一度、皇室典範の改正が現実的になってからでも、もう何年放置してきたのでしょうか。委員会の勧告は、長年国内での議論を先送りにしてきた結果だといえます。
【ジュネーブ共同】国連の女性差別撤廃委員会 10月17日

政府の政治感覚が庶民とかけ離れている一例として以下のような川柳を最後に上げるみたいと思います。自民党が「党勢拡大のためと称して「裏金問題で非公認に踏み切った候補者に2000万円を渡した件」に関しての川柳です。

朝日川柳(柴門蔵人選)2024年10月25日朝刊
2千万 老後資金に十二分     神奈川県 斎藤謙一
2千万 税も原資じゃ能登が泣く  東京都 藤井 明
あらこれじゃ公認するよりなお悪い 神奈川県 小早川潤子

 - 女性と仕事, 女性と政治

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