2012年度 ハッピー・キャリア企業表彰 

      2014/10/23

女性と仕事研究所メンター 森口ひろみ

10月に日本で開催された世界銀行の年次総会において、ラガルド専務理事は「女性が日本経済の鍵を握る」と繰り返し訴えました。
この発言は、国際通貨基金(IMF)が「女性は日本を救えるか」というリポートを先ごろ発表したのを受けたものです。リポートでは日本にオランダをモデルにして女性の就業率を高め、経済回復を図ることを推奨しています。

なぜオランダなのか。オランダは伝統的に男女の役割分担があり、専業主婦も多く、パート労働のほとんどを女性が占めているなど、女性の就労環境面で日本に近い国ですが、「パート労働の質の向上」を行い、七十年代初めでは三十%程度だった女性の就労率が90年代後半に日本を抜き、昨年には70%近くに達し、労働力の大幅な増大が、経済の回復に貢献した実績があるからです。
「質の向上」とは、パート労働の時間当たりの賃金を、同一職種のフルタイム労働と同じにしたことにより、経営者はコストに見合った仕事をパート労働にも求めるので、質が高まり、パート労働を通じて昇進することも可能になった。(毎日新聞より)

こういう一連のオランダの成功をIMFが見て、経済が低迷し、女性活用が進まない日本への提言となったようです。
女性の年代別就労率がM字型になっている国は、主要先進国の中では韓国と日本だけです。両国とも男女の役割分担が伝統的に強いのが特徴です。

ハッピー・キャリア企業表彰に取組んで四年、この間、応募企業のヒアリングにボランティアで参加して感じたことは、殆どの女性労働者がパート労働という実態です。その影には、正社員として残業の日々を送る「夫」が存在し、家庭生活のほとんどが「妻」により支えられているために、正社員としてフルタイムで働けない家庭の現実と「配偶者控除」を受けるための給与収入の上限規定が、女性が責任を担い、働きがいを持って働ける環境を阻害していることです。

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さて、本年度のハッピー・キャリア企業表彰に選ばれた企業は2社です。内1社に大阪同友会の会員企業が選ばれました。書類選考で選ばれた十社の中に同友会会員は四社あり、大阪同友会内での認知度は上りつつあります。

表彰された2社は、いずれも女性経営者です。自ら結婚もし、子育ても経験している女性経営者は、女性が働き続けるためには、何が必要なのかを、自らの経験の中から学んでいることもあり、ワーク・ライフ・バランスの実現が可能な会社づくりを実践されています。通関関係の仕事をされている会社では、女性活用と共に、男性社員の働き方に関する意識改革と残業削減にも熱心に取り組みながら、社内の仕事を見直し、それまで、男性しかしていなかった仕事にも、積極的に女性を配置して、社内における男女の役割分担の垣根を外しておられるのが、大きな特徴でした。
日本では男女の年間労働時間の差は600時間をこえているという統計があります。この会社のように、男性社員の長時間労働規制と女性の仕事を増やすことを同時進行で進めて行くことが、「女性は日本経済を救えるか」の答えになるのかもしれません。
もう1社は、家事・育児・介護代行サービスの会社です。女性が社会進出し、発言力を持ち、影響力を持つためのあらゆる家事代行サービスを提供することを目的としています。

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女性が働くことで新たなニーズが生まれ、新しい仕事と雇用が生まれる例です。「デパ地下」現象は、女性の就労率の向上と自分の財布を持つ女性の増加を時代背景にしています。
世界銀行ラガルド専務理事も勿論女性です。ウイットに富んだ、知的な話し振りのトップで、管理職に占める女性比率が三十九%と高く、国としてクオーター制度を積極的に実施しているフランスの政治家出身。世界で通用する女性の一人です。

ハッピー・キャリア企業表彰に取組んで四年、先ごろの世界銀行年次総会におけるニュースを読みながら、この取り組みの今日的な意義と方向性の正しさをあらためて確信しました。資金も人もないNPOが取組むには、もっと、強力なバックアップが必要とも痛感しています。

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