コロナ禍のリーダーシップ (その2 フェミニン・リーダーシップ)

   

変革の時代に必要なリーダーシップ

コロナの時代にリーダーの質が問われています。日本においても政治・経済のあり方を根本的に変えるリーダーシップが求められています。最近ではコロナ後の時代は全く新たな世界が登場するだろうと主張する意見が増えています。民主主義か独裁かという軸を中心に論じられていることが多い気がしています。しかしそうではなく、企業中心、男性中心、経済・競争中心、戦争も核もありきの社会軸を人類の幸福感を高めることを中心とする世界へ変えなければならないのだと思います。そのためのリーダーが必要なのです(幸福感・幸福度については次回のブログで)


政治や経済界が男性社会であり続けた時代は、リーダーといえば男性しか思い浮かばなかったのは当然だったかもしれません。しかし女性があらゆる分野で活躍し始めると、女性には男性と同等のリーダーの資質があるのは当然だと思うようになってきつつあります。しかし、それ以上に、女性の持つリーダーシップには、社会の在り方の軸を変える、変革が求められる機に必要な素質を有しているといわれています。すべての日常が一変してしまったコロナ禍の今、前例のない時代を切り開いていかねばならない時代になりました。長年に及ぶ激しい競争経済の結果、地球が壊れそうになっている今、今までとは違うリーダーの登場が必要なのです。大勢を引っ張っていく権力行使型ではなく、ともに歩む協調型のリーダーが必要です。勝敗にこだわった競争原理や軍隊的管理方式によるリーダーシップではなく、多様性を重視した柔軟性のあるコントロールを最小限とした人間関係に維持できるリーダーシップが必要なのです。これらの能力のその根源には数字による正確さを理解することではなく、人の感情や反応を感じ取る能力が備わっているかどうかが深くかかわっています。

フェミニン・リーダーシップ

女性には特別な人の感情や反応を感じ取る能力があり、それが変革時代のリーダーシップに適しているという研究がアメリカを中心に多くあります。1990年代以降、アメリカでは女性の管理職が40%を超え始めると、女性のリーダーは企業においても極めて優れていることが理解されてきます。女性のリーダーの資質として対人関係を築く技術が優れているといわれています。そして「Feminine Leadership」という言葉がよく使われるようになりました。女性のリーダーが優れている対人関係能力として3つを紹介します。

1)言葉以外の合図をつかむ能力があり相手の立場になって考え、その人の感情や反応を理解する力が優れています。傾聴能力に優れています。

2)感情の管理能力が優れています。とくにコンフリクトに対しても必要となる能力です。自分の感情を認識する力も優れています。

3)協調する能力に優れているということは「どちらも勝つ(win-win」という手法を探りあてることにつながります。

『フェミニン・リーダーシップ』という書籍があります。絶版になってのですが最近復刻されたそうです。マリリン・ローデン著/山崎武也訳『フェミニン・リーダーシップ』(1987年)に筆者が出会ったのは、出版から10年以上もたっていましたが、日本ではまだフェミニン・リーダーシップというと「女」を武器に巧妙に立ち回って出世することと思われることさえありました。そうではありません。男性中心の社会ではリーダーは、「競争原理」と「勝者・敗者」「効率主義」をマネジメントの中心に据えますが、女性リーダーは、「共感する能力」や「受容する能力」「分析能力」などを含めたコミュニケーション能力の高さでマネジメントを進めるという違いがあると書いています。そして企業の変革にはフェミニン・リーダーシップが必然的なのだと述べられています。アメリカで1980年代以降、大きな広がりを見せた書籍ですが30年以上経て、今、日本で最も必要は情報ではないかと思います。日本を大きく変えるためにです。

前回(コロナ禍のリーダーシップ その1)ではドイツのメルケル首相を紹介しましたが、今回はニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相を紹介します。

実際のところコロナ禍の闘いに最も成功している国は女性がリーダーの国ばかりなのです。アイスランド、台湾、ドイツ、ニュージーランド、フィンランド、デンマーク他。

ワシントンポスト紙では、「コロナ禍のさなか、『理性の声』と称えられる世界の女性リーダーたち」という記事がでました。

最高の決断力と冷静さで、現実と向き合う

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、ウイルス封じ込め対策の最前線に立ってきました。アーダーンは大胆な方針を採り、感染を抑制するだけでなく、新型コロナウイルスを一掃する戦略に出たのです。きわめて迅速に国境を閉じ、最初の感染者が確認されてからいち早くロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったリーダーのひとりです。

現状の新型コロナウイルス(Covid19)の広がりを「今は戦時なのだ」とよくいわれようになりました。確かに人類は疫病との戦いの歴史を歩んできましたし、戦時にはウイルスをまき散らすという戦略はつきものでした。このコロナ禍の時代に、米中の危うい関係は空恐ろしいものを感じます。コロナウイルス対策に対する女性リーダーの成功をたたえ、もっともっと政治にフェミニン・リーダーシップをとり入れましょう。

アメリカ女性参政権100年、カマラ・ハリス副大統領の活躍を願って

アメリカ大統領選挙に向かって、民主党の副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員(55歳カリフォルニア州選出)がきまりました。女性でしかも「黒人」の副大統領が誕生すればアメリカ史上初になります。 8月19日の就任演説ではフロイドさんの事件への記憶を呼び起こしながら「人種差別に対するワクチンはない。われわれは取り組まなければならない」「ジョージ・フロイドのために、警官に射殺されたブレオナ・テイラーのために、他の名前を呼ぶには多すぎる人々のために、われわれの子どもたちのために、われわれ全員のために」と呼びかけました。とても頼もしいですね。アメリカの女性の参政権獲得は1920年のことで、今年でちょうど100年になります。アメリカと日本の変革を希望しフェミニン・リーダーシップの広がりを期待したいものです。そういえばニュージーランドは、世界で一番早く、1883年女性の参政権を獲得した国です。コロナ禍のリーダーシップはもう少し連載します

 

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