アメリカの変貌に驚愕!

   

2024年は世界の“選挙イヤー”でした
そして2025年1月20日、トランプ氏の大統領就任でアメリカが歴史は大変貌を遂げました。選挙“イヤー”を経た世界にどんな影響があるのでしょうか

アメリカの変貌に驚愕!
世界のリーダーであったアメリカが、国際秩序や民主主義のルール、グローバルな視点をかなぐり捨てて、自国の(自分の)ためだけに権力を行使する一国主義(独裁者)を目指す国に変貌する、そんな国を、そんな国の大統領を誰が敬意の念を持つでしょうか。敬意や尊敬を得られない金満国家(金満大統領)をめざしたところで、アメリカの世界での地位は下落するだけです。指導力は必ず低下するでしょう。その“つけ”は経済にも跳ね返ってくることでしょう。これでは「偉大なアメリカ」にはなれないでしょう。
民主主義、法の支配、法の秩序など国の形の最後の砦が、揺らぎながらも作動してきたアメリカでしたが、それを自ら捨てる宣言をし、実行に移したのが、今回の大統領の出現です。具体的に侵略者まがいの発言もあります。「パナマ運河を取り戻す」、「カナダを51番目のアメリカの州にする」、「メキシコ湾をアメリカ湾」の名称にする、デンマーク領「グリーンランドはアメリカの安全保障にとって必要」などと言っています。これではロシアのウクライナ侵攻は責められないでしょう。また、アメリカはWHO(世界保健機構)からの脱退も宣言しました。国連を中心とする多国間の協力の枠組みに背を向け、拠出金を停止します。気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱も表明しました。世界一の経済大国であり、世界第2位の主要排出国であるアメリカが、全人類が直面している深刻な課題に対して、背徳的行為をしているのです。アメリカも干ばつや洪水、山火事(ロスアンジェルス火災)などの気候災害が悪化の一途をたどっているのです。しかしこれから石油とガスを掘りまくりと宣言。「グリーン・ニューディール」に終止符を打ち、電気自動車の(EV)の義務化を撤回する、といいます。法の秩序を無視し、民主主義を壊し(ホワイトハウス乱入者の恩赦での釈放は典型)、国際的な協調を壊すトランプの横暴に、世界中が戸惑うばかりです。

ジェンダー平等に関して、3つのトランプの暴挙
1) 「性別は男性、女性のみ」、 2) 多様性の促進も廃止

トランプ氏は就任演説で「本日から米政府の公式方針として、性別は男性と女性の2つのみとする」と宣言しました。そして出生時の性と異なる性自認をもつトランスジェンダーの権利保護や多様性を促す政策を撤回する大統領令に署名しました。連邦政府が「ジェンダー」ではなく「セックス」という言葉を使い、旅券(パスポート)や査証(ビザ)などの公式書類は出生時の性のみを表記するよう定め、連邦刑務所などでトランスジェンダーが自認する性の施設を使用することも禁じました。
さらに、連邦政府のDEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムを廃止する大統領令も出しました。DEIについて「バイデン政権が強制した違法で道徳に反する差別的プログラム」と断じ、関連の部署や役職を廃止するよう指示しました。多様性を目指すDEI政策は(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包摂性)と呼ばれ、アメリカ文化の大きな特徴となっています。
DEI政策は1960年代の公民権運動から誕生したアファーマティブ・アクション(積極的に差別を是正するための措置)として始まりました。奴隷制など「過去の過ちに対する補償」し「負の連鎖を断ち切る」の役割がありました。女性差別や黒人など人種的マイノリティの状況を改善するものでした。高等教育を受ける機会や職業・キャリア・報酬の格差を是正するために大きな成果を発揮しました。近年では、「過去への過ちへの補償」というよりも、徐々に「多様性の確保」という解釈になり、アファーマティブ・アクションを含むDEIの取り組みが一般社会、特に企業で広がりました。もちろん日本への影響も多大なものがあります。
ところが、トランプ大統領就任で、大きなバックラッシュが起りました。政府のDEI促進プログラムを廃止する大統領令を次々と出し「われわれは肌の色に関係なく、実力主義の社会を築く」と語ったのです。折しも2023年6月に、バックラッシュの動きを加速させるアメリカ連邦最高裁判所が、大学の入試におけるアファーマティブ・アクションを憲法違反とする判断を下していました。現在、連邦最高裁裁判官の構成は保守派が6人、リベラル派は3人で、保守派に大きく傾いています。アファーマティブ・アクションは1978年以来、45年ぶりに違憲とされたのです。
しかし多様性が社会の活性化をもたらすというのは、もはや自明の理となっており、アメリカという国の存立そのものであり、また今後も必須です。DEI施策はこれからも必要、要の政策です。特に日本においては、女性を含め、多様な人材の能力発揮があってこそ、今後の発展があります。日本企業においては今、始まったばかりのDEI施策は今後、日本企業自身の経営目標になることでしょう。トランプやアメリカの逆風に恐れず、日本のそれぞれの企業は理念や方針に従って、引き続き取り組みを進めることを求めたいものです。

バッデ主教、トランプにLGBTQ(性的少数者)や移民への慈悲の心を、と説教


1月21日、米ワシントンのワシントン大聖堂での礼拝ロイター© 読売新聞
マリアン・エドガー・バッデ主教は説教の中で、トランプ氏が根拠なく「凶悪犯罪者」と呼ぶ移民について、「彼らは米国市民ではないかもしれないが、税金を納める良き隣人です。圧倒的多数は犯罪者ではありません」と指摘。LGBTQや移民、戦禍を逃れてきた人たちに触れ、「大統領、慈悲の心を持ってください」と促しました。愛を持って真実を語り、尊厳を重んじ、「神と謙虚に向き合う」ことも求めたのです。トランプ氏は不快感を示したということです。しかし、しかし、とにかくも、向き合って、正当な意見を発信することから始めねばならないのでしょう。

3)中絶支援の禁止
ホワイトハウスは、海外で人工妊娠中絶を支援している団体にアメリカ政府が資金援助することを禁じる措置をトランプ大統領が復活させる方針だと発表しました。中絶の権利を擁護してきたバイデン前政権が撤回していたものをトランプ大統領が再び覆したのです。アメリカの首都ワシントンでは24日、人工妊娠中絶に反対する団体が大規模な集会を開き、アメリカメディアによりますと全米から数千人の参加者が参加しました。これまた闘いの始まりです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250125/k10014703591000.html

アメリカの今後
米国は建国以来、21世紀の4分の1の今日まで、世界で優位な位置を保ってきました。その背景には国際的な協調や強力な同盟、国際機関での大きな影響力があったからです。それらの地道な努力で得た世界からの敬意を、手放してアメリカはどうして偉大な国として存在し続けられるのでしょうか。今回のトランプ政権の大変貌は米国を再び偉大にするなどできはしない。国内におけるポピュリスト(大衆迎合)国家の出現をもたらすだけだと思う。世界を魅了する力がなくなったアメリカ、偉大ではないアメリカになる可能性の方が大きいと思うのです。それぞれの州の独立した決断と行動が連邦政府の強権とぶつかる場面も増えることでしょう。
ただ政権移譲はスムーズに行われたのです。だからこのトランプ氏の世界を驚愕させる様々な行動にも冷静・沈着に対策を立て、スムーズに政策転換を推し進めるよう、それぞれが綿密な準備や行動を始めなければならないのでしょう。日本人の私たちもともに。アメリカの問題は世界の問題ですから。

(アメリカの選挙結果については、次回はNPOを中心にもう少し検討したいと思っています)

参考にした紙面等
日本経済新聞  2025年1月22日
毎日新聞  2025年1月22日
朝日新聞  2025年1月22日
産経新聞  2025年1月22日
読売新聞  2025年1月22日
JapanTimes 2025年1月15 日
https://www.tokyop.co.jp/article/381772
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250120/k10014698441000.html https://news.ntv.co.jp/category/international/981d14ba9c994e808483eeb46e081256 https://www.kanaloco.jp/news/international/article-1142729.html

 - ブログ

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

ベート―ベンに見習おう ―Women’ s Activist として、生きていたい。途中経過のご挨拶

私は80歳を超えて、83歳に近づいてきました。よくも悪くも初めて迎えた超高齢社会 …

新年あけましておめでとうございます

新年おめでとうございます 本年もよろしくお願いいたします ヒラリーショック消えず …

2024年秋、日本の政治と企業は変わるのか リーダーシップの変革を

兵庫県知事のリーダーシップの欠如 兵庫知事は辞めろ」パワハラ疑惑で市民ら100人 …

今回の選挙結果への「絶望感や不安」にどう対処する?

女性議員の数は前回より減少 第49回衆院選は10月31日投開票され、投票時間終了 …

フェミニズムとわたしと油絵(2013~2023)(その13) もうすぐ展覧会!

1.もうすぐ展覧会! かねてより準備してきました「金谷千慧子フェミニズム絵画展」 …

パーキンソン病にips細胞による新しい治療

さまざまな細胞に変化する人のips細胞(人口多能性幹細胞)から脳の神経細胞を作り …

フェミニズムとわたしと油絵(2013~2023)(その8)

―「フェミニズム・アクティビスト金谷千慧子のプロフィール」その2 整形外科病棟を …

第75回(2022年)女流画家協会展に「プラハの街」入選しました

今年も女流画家協会展入選しました。初めて応募してから連続5年です。 「女流画家協 …

ブログ リニューアルしました

English(英文はこちら) 12月3日、今日はとても空気が冷えています。御堂 …

2回目の出版記念シンポジウムが終わりました

  東京につづいて、3月28日(木)夕刻から第2回目の大阪での出版記念 …