キャリアをデザインする─「フレンテみえ」Web限定 男女共同参画ゼミ<第2回>

   

■キャリアをデザインする 女性とキャリアをつなぐもの| 三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」

三重県男女共同参画センターのウェブサイト「フレンテみえ」のWeb限定 男女共同参画ゼミで掲載した「キャリアをデザインする 女性とキャリアをつなぐもの」(全3回)の第2回目です。
第1回目の記事

第2回 社会環境と女性のキャリア

1.M字型就業形態とは― 悩む、揺れる、女性の29歳

日本の女性の労働人口は「M字型」になっているとよくいわれるのは、20歳代後半をピークにその後減少し、再び40歳代後半に2つ目の山を迎えるという形状からです。

女性の年齢階級別労働力率(国際比較)|(資料)内閣府 平成25年度版「男女共同参画白書」

図1 女性の年齢階級別労働力率(国際比較)
(資料)内閣府 平成25年度版「男女共同参画白書」

しかし諸外国では「M字型」ではなく「台形状」になっています。出産や子育て期にも仕事を継続する女性が多いのです。日本と何が違うのか、考えなければならないところです。日本の女性の多くが仕事をやめるのは29歳前後です。女性の平均勤続年数は8.9年:2012年ですから、短大卒で29歳、四大卒で31歳、高卒で27歳の頃です。このころ、仕事はベテランになりますが、「ずっとこのままでいいのだろうか」と深刻に考えるようになります。彼がいないのではない。結婚もやがては・・・。しかし「何かに打ち込みたい」「始めたい」と思う月日が続くのですが、それが何か分からない、どうしていいかわからない。資格なのか、留学なのか、転職なのかと悩みます。子育てや夫の転勤で悩んでいる人もいます。この会社で仕事の満足が得られるのかという悩みもあります。「いっそ結婚・出産で家庭に入ってしまおうか」などと揺れるのです。こんなとき就活前にキャリアをデザインしたことを思い出してください。きっとヒントになるはずです。

2.働くことは人間にとって最も基本的な活動 (女性差別撤廃条約 第11条)

女性にとって働くことはますます大きな位置を占めるようになっていることは第1回でも触れました。働くことは最も基本的な人間の活動です。日本も1985年に批准した『女性差別撤廃条約』第11条では、「労働権は人類の譲り渡すことのできない権利である」と謳っています。働いて、その対価で自分生活を形成し、社会的に生きていくというのは、人間としての基本=人権であるということです。『女性差別撤廃条約』の批准を契機に、日本でも女性が働くための施策が講じられてきました。男女雇用機会均等法(1985年成立)を手始めに、均等法の改正ですべての労働条件(賃金・昇格・教育訓練など)の男女格差を禁止規定し、セクハラ・パワハラを起こす企業風土を改善しようとしてきました。しかしまだまだ不十分なのは確かです。ただ働き続けようとする女性は、続けるための支援が結構揃ってきていることも事実ですから、すぐに「退職」と決めつけないで、アンテナを高く掲げて、経験者にも相談してみましょう。道は開けてくるものです。そうそう保育所の近くに引っ越すというのもひとつです(私もそうしました)。

諸外国で「M字型」になっていないということは、働く時間を短くしたり(正社員のまま)、育児休業を男女ともに取得したり、保育所を整備したり、職業トレーニングを充実したりして、女性が仕事を辞めることがないように、両立が可能になるよう、女性も仕事で活躍できるように、国・自らが果敢な努力してきたからこそです。でもこのことは、「定年まで同じ企業に勤務することがいい」とばかりいうのではありません。転職もあり、しばらくの(長期間でも)休憩もありです。しかし再び何かを始めたいと思うなら女性を応援するところが身近にほしいものです。具体的には男女共同参画センターを訪ねると糸口が見えてきますよ。

3.ワークワーフバランスとデーセントワークで男女ともに質の高い仕事と人生を

ただ政治に期待して待っているだけでは、なかなか間に合いません。自分たちでできることは始めましょう。そうです。自分たちの働き方から変えるのです。そうでなければ新しいことは何も起こりません。ワーク・ライフ・バランス(work–life balance)は、そんな働く女性にとっての非常事態の救世主なのです。「仕事と生活の調和」と訳されますが、「一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活でも、子育て・介護、趣味などが実現でき、豊かさが感じられる働き方」をいいます。仕事に偏重しない働き方は「デーセントワーク(decent work)」ともいい、従来のように長時間働いて、多くの賃金を得ることが労働の目的というのではなく、人生を豊かにする質の高い働き方をするのです。そのためには男性の働き方の変革も当然必要になります。男性も女性も働き方の変革が必要です。

そしてワーク・ライフ・バランスは、企業にとっても利点が多いのです。まず1)優秀な人材の確保ができます。ワーク・ライフ・バランスを企業戦略として実施している企業は、若い世代にとって魅力的であり、よい人材が集まります。両立支援と人材育成を併用すると、その相乗効果で,企業業績はプラスになるという調査結果が多くあります。2)社員の意欲向上・定着につながります。ワーク・ライフ・バランスの実現度が高いと、社員の仕事への満足感や意欲が高くなり、能力発揮につながるのです(図2参照)。また結婚・出産を期に退職する女性が減り、有能な女性管理職も増加します。子どもや家族と過ごす時間、趣味や習い事などの時間をつくるために効率的に働こうとする動機にもなります。休暇をしっかりとってリフレッシュ効果が高まりますし、視野も広がります。3)生産性の向上がはかれます。わが国の労働生産性(就業者1人あたり名目付加価値)が低いという実態があります。特に男性の労働時間は欧米に比べて相当長いにもかかわらず、労働時間あたりの国内総生産(GDP)で労働生産性を計算するとOECD(経済協力開発機構)加盟30カ国中、第20位、先進7カ国では最下位です。この数値は、長時間労働で付加価値のある商品・サービスを産み出す時代ではなくなったことを示しています。4)長時間労働による心身の健康問題が解決します。社員の中には意に反する長時間労働で苦しんでいるケースが多いのも確かです。長時間労働からは決して生産性の向上は見込まれません。現在働いている人のなかで6割以上が、自分の仕事や職業生活に関して「強い不安、悩み、ストレスがある」と答えています。残業がないのが当たり前で、仕事と育児の両立ができる制度が企業に整備され、その制度を気兼ねなく仕える企業土であれば、働き続けることはできるのです。

図2 WLBの満足度が高い人ほど会社のために努力をいとわない(資料)東京大学社会科学研究科WLB推進研究プロジェクト「働き方とWLBに関する意識調査報告書」平成20年12月

図2 WLBの満足度が高い人ほど会社のために努力をいとわない
(資料)東京大学社会科学研究科WLB推進研究プロジェクト「働き方とWLBに関する意識調査報告書」平成20年12月

「2020年までに、あらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度」という目標があります。これは国連ナイロビ将来戦略勧告で示された国際的な目標数値や諸外国の状況を踏まえ、10年前に政府が閣議決定し、「男女共同参画基本計画(第2次)」においても明記したものです。指導的立場とは、国会議員や地方議員、企業や団体の管理職相当職以上、専門的技術的職業のうち特に専門性の高い職業に従事する者と定めています。まだまだ数値的には難しいだろうとも予測されていますが、この目標は「女性が輝く」社会への一里塚になるはずです。「女性が輝く」は男性も幸せを享受できる社会です。私たち一人ひとりが、「仕事で輝く」社会をめざし、一歩ずつ前に進みましょう。

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