新型コロナウイルスは女性にどのような影響を及ぼしているか

   

 

    続くコロナ禍で働く女性のしんどさ

コロナ禍の下、日本でも感染拡大は多くの人々に経済的なダメージを与えていますが、特に働く女性への影響が大きく、そのなかでも女性の非正規雇用に被害が襲いかかっています。総務省が12月に公表した11月の調査労働力によると、非正規で働く労働者数は2124万人。非正規雇用で働く女性は48.5%で、男性(16.8%)の約3倍になっています。前年同月に比べて62万人減少し、9カ月連続の減少となりました。男女別では、非正規雇用の男性が25万人減少、女性が37万人の減少となっています。産業別の就業者数をみると、特に宿泊・飲食サービス業、製造業などの減少幅が大きいのです。4月以降に解雇や雇い止めにあった割合は、女性が男性の1.2倍でした。また、自ら離職した女性は、男性よりも2.5倍もの高い割合で、仕事も求職活動もしない「非労働力化」しているということになります。

子育て中の女性への打撃

女性は非正規雇用や低収入層の割合が男性と比べて多く、女性の低収入層、非正規雇用者は解雇や雇い止めなどの影響を受けやすいのです。実際コロナ禍で女性の雇用状況は悪化しています。特に大きな打撃を受けているのが、子育て中の女性たちです。子どもを持つ女性に限ると、第一子の年齢が「4~6歳」で正規雇用が大きく減り、「7歳~9歳」で非正規雇用が増加していきます。幼稚園・保育園入園や小学校入学などのタイミングで、非正規雇用や仕事を辞める(辞めざるを得ない)女性が多いことがわかります。

家庭での女性は、コロナ禍で外食の減少により、家族の食事にかかわる時間が増えます。保育園や学校の休園、休校にともないその他の家事や育児の負担も増加します。緊急事態宣言が解除されて、多くの保育園・小中高校が再開されても、子育て中の女性の仕事復帰は著しく遅くなります(後回しにされる)。分散登校や保育園の自粛要請などが続き、子育て中の女性への負担が改善されない可能性があります。

緊急事態宣言期間中は、子育て男性の家事・育児時間が若干分ほど増える(26分程度)といわれますが、宣言期間をすぎると通常月の水準に戻るのです。

国際社会調査プログラム ISSP(International Social Survey Program)が2012年に実施した家族と性役割に関する意識調査によると、日本は子育て世帯における男性の家事分担率は世界最下位(世界33カ国の18歳未満の子供がいる家庭)

出典元:舞田敏彦 http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4607_1.php

一人で子どもを育てている女性の場合には、さらに雇用の不安定や生活困窮が直結してくるのは当然のことでしょう。そのことは次の世代、子どもの貧困へつながるわけです。コロナ禍で非正規雇用失業者が急増した2020年、女性自殺者は前年から1000人近く増えて約7000人を記録しました。統計数字から浮かび上がるのは、「雇い止め」増加から約2カ月で自殺者も増えるという残酷な現実があります。

メンタルヘルスへの影響も深刻

女性のメンタルヘルスへの影響も深刻です。解雇・雇い止めにあった女性のうち、12.8%が「うつ状態」と診断されたと回答したといわれています。コロナで雇用に大きな影響を受けている女性は精神的にかなり追い詰められています。自殺の予備軍になっているといっても過言ではないのです。

コロナ禍による事業縮小、雇用調整などの経済的なダメージは長期化が見込まれます。転職サポートや職業訓練を強化することも大事ですが、メンタルケアの支援(自信を取り戻す)や再就職をしやすくする長期(3年程度)職業教育支援が今こそ必要です(アメリカなどのコミュニティ・カレッジ等)。

そもそも女性が低賃金で不安定な非正規就業につきやすい(つかされやすい)というところに問題があり、この傾向は1990年代から増えており、近年危険な兆候だとずっと叫ばれ続けたことです。女性の雇用は増えているものの、非正規率が高く、条件が良い仕事に就けないという構造的な問題が今回のコロナ禍で露呈したといえます。

介護職として、医療職として、コロナウイルスの最前線で闘っている女性への影響

女性は、介護職として、医療職として、コロナウイルスに対する前線で働いています。女性は、医療従事者のほぼ70%を占めており、パンデミックの最前線で闘っているのですが、それは感染リスクにより多く晒されているということです。医療部門のリーダーシップと意思決定過程において、女性の管理職や意志決定者の割合が低いということは、多くの場面で依然として男女不平等が存在するし、女性に不利益な雇用、賃金、作業実態、所得、休暇などが存在するのです。そしてより幅広く生活水準の低下が広がるとみられます。経済的な影響を男性より被る可能性があります。

家庭の内では、家事や介護などの無給労働の大半を依然として負担しており、外出制限、自宅待機、学校や介護施設の閉鎖、高齢の家族が抱えるリスクなどは、例え女性とそのパートナーが自宅にいて共に在宅で働き続ける場合でも、女性にさらに負担を強いるとみられています。重要なことは、ホームステイという状況で女性が暴力、搾取、虐待、ハラスメントに遭うリスクが高まるということです。これは過去のいくつかの危機の時にも、同じです。

生活が激変して1年余り。厳しい状況を訴える場もなく耐えている女性は少なくないと思われます。これは過去のいくつかの危機の時にも、同じです。

「誰が黙らされてきたのか」 

新型コロナウイルス禍がきっかけで、女性が多く働く医療従事者や介護従事者の現場はこの20年で、大きく変化されてしまったことを分析する書籍に最近出会いました。「地域を支えるエッセンシャル・ワーク(山谷清志・藤井誠一郎著・株式会社ぎょうせい)です。「これまでの行政改革は、民営化・民間委託の名目で無意味な経費削減競争を強い、エッセンシャル・ワーカーに非正規就労を拡大させ、賃金カットを横行させた。改革を進める中央政府は、「仕事を下請け業者に出してコストカットをする、そのために非正規は低賃金で十分だと思ったのではないか」と書かれています。筆者の私はそれに加えて、「女が多くやる仕事だから、そこそこで大丈夫、パートなんだし、仕事への尊厳や執着はそれほどないし、すぐ辞めるだろう」といった誤った女性への仕事観が、指導部、上層部に固着していたのだろうと思います

日本の中央政府は新自由主義経済を推し進め、子育てや教育、介護福祉などの社会的再生産を行うセクターの公的支援をどんどん削ってきました。その結果、命に関わる仕事の大部分を女性が無償で引き受け、不安定な非正規で働かなければならなくなっているのです。その根底には、そもそも利益を生むためには、家庭や共同体などは、「非経済的」と称される無償労働を利用して成り立たせてきたという構造的な特質があります。

女性も競争に参入し、高い生産性を上げ、市場や国家に貢献することが目標だとする考えもありますが、それはほんの一握りの女性に限られるのです。”女性活躍推進”とか「男女共同参画」、それで成り立つ理論です。

行政改革は以下のような指針で進められました。具体的には①事務事業の再編・整理・廃止・統合、②民間委託などの推進、③定員管理の適正化、④給与の適正化、⑤第3セクターの見直し、⑥経費節減の財政効果、⑦地方構成企業の経営改革で保健所や病院改革がなされてきたのです。

こうした改革では、エッセンシャル・ワーカ―は人件費をコストと言い換え、これらの仕事は「誰でもできる」「交替がきく」「簡単な仕事」と低く評価し、エッセンシャル・ワーカーの仕事と人を同時に貶めてきたのです。

「誰が黙らせてきたのか」「誰が黙ってきたのか」、このコロナ禍の時期に、やっと暴露されたのではないでしょうか。

女性たちは、もう黙ってはいてはすまない時期に来ました。

5月3日は憲法記念日でした。憲法改正に賛成意見が若干増えたと報じられていた。コロナウイルスに対して私権をある程度制限しようとしたら、現在の憲法を改正する必要があるという意見が多くなったのであろうという解説が添えられていたが、そうでしょうか。今まででも声をあげなかった人たちの声を奪う憲法改正議論は、ありえないことである。

選挙は近い。投票に行こう!

 

 

 

 

 

 

 

 

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