だいじょうぶでしたか?  ―熊本大地震に寄せて

   

deltaworks-1239_1008x672昨夜の警報で熊本市での震度7の地震を知りました。懐かしい熊本の友人の安否がとても心配になりました。

熊本に友人が増えていったのは、2000年のころからでした。熊本県庁の女性職員の方から「熊本は女性知事なのに、女性管理職の比率が全国でワーストに近いのです。何とか比率を上げたい」という申し出からでした。
熊本の知事、塩谷義子氏は日本で2人目(2000年~08年、福祉系の出身)の女性知事でした。熊本の職員管理職比率は2015年度で4.2%(全国42位)です(内閣府男女共同参画局「全国女性の参画マップ」平成27年12月)。女性職員研修の場で、アメリカのNPO catalystの活動(企業の女性リーダー育成)を紹介し、「職場の触媒(catalyst)になろう!」と盛りあがったものでした。

その後さまざまな講演やセミナー講師で県下をめぐり、私にとっては、熊本はとてもなじみ深く、懐かしい街になりました。通町筋の商店街をぶらぶらし、おいしいコーヒー店で一服、オークス通りのブティックでいつもの靴を買い替えました。鶴屋百貨店もおなじみでした。マッサージ店も登録会員でした。わが国の最初の知事は、大阪の太田房江氏で、同じく2000年セクハラ知事横山ノック氏の退任後の選挙で当選したのでした。

「2000年ごろ」を思い起こしてみますと、私(たち)は「21世紀こそ女性の時代!」と心から確信していたものでした。

1999年施行された男女共同参画社会基本法、この法律は、「男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性にかんがみ、男女共同参画社会の形成に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにする」、というものです。これを100%男女平等をめざす法律とは思えないものの、妥協しても、制定するほうがいいという感覚でした。

なにしろ「女性の時代、21世紀が待っているのだから」という楽観的な気分でした。
しかし、このころからバックラッシュ(Backlash)の波が本格化したのでした。ジェンダー問題においては、男女平等や男女共同参画、ジェンダー運動などの流れに反対する運動・勢力が力を増してきました。

熊本出身の女性議員(2000年初当選)は、男女共同参画に対する「過剰な」取組みを批判し、選択的夫婦別姓制度の導入にも反対、婚外子の相続差別解消のための民法改正にも反対していました。自民党特別委員会が決めた女性差別撤廃条約選択議定書批准をも、外交部会で反対し覆しました(週刊金曜日2013年10月4日)。衆議院予算委員会において、「慰安婦」問題について、「単なる売春行為」「政治的にも歴史学的にも決着していない問題を教科書に載せるのは非常に問題」と述べました(同週刊金曜日)。
同じく2000年6月の総選挙では山谷えり子氏も衆議院議員初当選を果たしていました。

そしてバックラッシュの嵐は次第に、マスコミや宗教団体とも連携し、ジェンダーフリーや「過激な性教育」及び選択的夫婦別姓制度導入、男女共同参画条例制定に反対する運動が強くなりました。

そしてその頂点はバックラッシュ裁判でした。男女共同参画推進センター『すてっぷ』(大阪府豊中市)は非常勤の館長・三井マリ子さんを雇止めしました。それに対して反対する裁判でした。2004年12月、三井マリ子さんは、この雇い止め(解雇)を、男女平等に反対する勢力の圧力に屈した不当な雇止めであるとし、同市と施設の管理財団を提訴しました。
この裁判を、解雇に反対する側で「バックラッシュ裁判」と呼んだのです。

2010年3月、大阪高裁で三井さん側は逆転勝訴。「豊中市が三井の行動に反対する勢力の組織的な攻撃に屈した」「説明をせずに常勤化・非常勤雇止めを行ったのは人格権の侵害にあたる」と認定し、市に150万円の賠償を命じたのでした。

勝利後出版された『バックラッシュの生贄―フェミニスト館長解雇事件』(三井マリ子・浅倉むつ子編著2012年3月旬報社)では、男女平等へ向かう状況に逆行して、全国に吹き荒れた「バックラッシュ!」バックラッシュ勢力の陰湿な介入と圧力。それに屈した地方自治体により、女性センター館長が解雇! 歴史的な勝利を勝ち取ったと評価されました。
ちょうど10年間。政治と行政がつるんで男女共同参画政策を後退させていく過程であったともいえます。

今、バックラッシュの嵐は止んでいるかというと、そうではないのです。いつも、いつも身体を張ってバックラッシュ裁判のときのように(私など何ほどの応援もできていないが)男女平等へ向かう逆行に対しては、立ち向かっていないといけないと切に思います。

少し長々と書いてしまいました。熊本の友人は、「なんどもなんども続くので、とても怖い」「食器が落ちても、本棚が落ちても、怪我はないよ、だいじょうぶ」といっていました。
でも発生から24時間たって、怪我人が1500人を超え、身体に感じる地震は150回を超えると報道しています。「平成28年熊本大地震」と命名されたとも。
地震を避けられない日本に住んでいるわれわれです。苦しいです。

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