「N女」ってご存知ですか?「N女の研究」(中村安希著)紹介

   

NPOの新しい働き方を生み出す「N女」たち

「N女」とは何か

2016年11月25日に株式会社フィルムアート社から刊行された「N女の研究」を紹介したい。ノンフィクション作家らしい時節に呼応した切り口だが、丁寧な取材記録である。

「N女」とは、NPOなどの非営利セクター・営利の社会的企業を含めたソーシャルセクターで働く女性を総称した呼称(NPOサポートセンタースタッフ杉原志保さんの発案らしい)で、「自分の興味関心に貪欲で、自主自律的で、既存のどの女性雑誌のカテゴリーにも当てはまらないニュータイプの女性で、この種の女性は、従来の男性中心の就業環境にいるより、NPOという職場が、自由に社会をクリエイトできるし、自分を試し、ミッションを具現化できる場としての魅力があり、好奇心のある行動的な女性にとって、新しい活躍の場所になっている」という。

そしてこの「N女」の出現の背景には、経済も、雇用も、教育も社会福祉も、底が抜け落ちるように変わっていった現代社会があり、このような崩れゆく日本に現れた、最後の切札になりえるかもしれないという期待を持って書かれている。「N女」は、平均30歳代で、高学歴や高職歴を持っているのに、あえて収入の低い、不安定なNPO法人や社会的企業を職場に選んでいる。それだったら、それなりの人生観や女性の働き方に対する意見があるだろうという前提になっている。

「N女」の特徴

「N女」の特徴は、一つは「行政を当てにしない」という姿勢を持っている。そしてもう一つは「きれいごとを言わない」という性質があるという。
きれいごとを言わないということは、きれいごとや実感をともなわない理論では、横行する派遣切りやホームレスやシングルマザーの厳しさには、何の解決にもならないことをよくわかっている世代だからである。さらに自分もまた現実社会の厳しさから逃げ切ることなどできないとわかっているのである。だからシビアかもしれないがホンネの言葉が出てくるのだと思う。

NPOの業界は人材の入れ替わりが激しい。経営が苦しいからという理由も大きいが、日本に前例のない職場であり、長期的な設計・計画やキャリア設計がしにくい。(本当にNPOの経営は難しい。「戦略的マネジメント」なんて何の役にも立たない。日々どんでんがえしが起こる・・・)。そのNPOで「行政を当てにしない」ということは、行政や国にお金がないことを充分知っており、ないどころか国の膨大な謝金のもと、役所の補助金に振り回されず、自立的運営を図ろうとし、もっとお金のあるところから集めた方が手っ取り早いと考える世代なのだ。そしてだめなら職場を辞めていくという割り切りも持っている。

それに反して「旧N女世代は、役所の対応や補助金に強いこだわりを持ち、役所だからお金は出せるでしょう」と考えている、という。
まさに私は「旧N女世代」なのだが、その他の方法を考えるヒントも持ち合わせていなかったのかもしれないと思う。その他、元祖N女と現代N女の相違点として、「共に高学歴で世帯収入も高いというのは共通だが、元祖N女は「夫の収入」で活動できていたということであり、NPOの収入を主婦のパート的な感覚、お小遣い稼ぎという位置づけになっている。

キャリアを築くことを前提として生きている現代「N女」は、非営利組織を「就職先」と認識しており、フルタイム労働によって年収を稼ぎだす対象として位置づけている」(p96~97)。この世代間の意識の差は、「女性の社会進出が進み、職業意識が変化してきたからだが、同時に日本全体の雇用が不安定になっていることも一因ではないか」とも。

とにかく一気に読めた。

「N女」のシンポジウムのお知らせ

『社会を変える!女性たちー収入より、やりがい求めNPOへ』
日時 2017年2月4日(土)AM10:15~12:15
場所 大阪市立大学梅田サテライト102教室
N女を代表して名付け親 杉原志保(NPOサポートセンター事業部プロデューサー) さんが来られます

詳細はこちらから
https://www.facebook.com/events/213979905731807/

 - NPO, 女性と仕事

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