世界中で女性の行進が始まった ─ヒラリーショック、その後
トランプ大統領の就任式でも「反対」のデモが多かったが、翌日のCNNからはピンク(ピンクのニット帽が多い)に彩られた大きなうねりが流れてきた。女性差別、マイノリティ差別をする大統領を許さないという叫びである。雨になったら虹色の傘も目立っていた。60カ国にデモは広がっている。ワシントン、ニューヨーク、マサチュセッツ、シカゴなどなど、全米に広がっている。東京でも。
コメンテーター、記者、コラムニストなどがデモの画面の前面で次々に話す。「アメリカは今覚醒をした。本当にトランプ大統領が誕生してしまったのだ。もうオバマもいない」「自分の声で言わねばならない」「この個人的な衝動的なバラバラの意志表示から、どう運動を組み立てていくかです」「民主党はやりなおさねばなりません」などと語っている。
米国外で最初に大きなデモが実施されたのはオーストラリア。シドニー市内でのデモには主催者発表で5000人。「ガール・パワー対トランプ・タワー」「トランプを降ろせ」などと書かれた横断幕もあった。オバマ前大統領の父親の出身国ケニアの首都ナイロビや、南アフリカのケープタウン、ガーナやマラウィでも女性らがデモを展開した。欧州ではローマやパリ、ベルリン、バルセロナ、ロンドンなど数十カ所の都市で大規模なデモがあった。ロンドンでは少なくとも10万人とされる規模のデモ隊が米大使館前から3キロ余り行進し、市中心部のトラファルガー広場で集会を開いた。
女性の権利のほか欧州連合(EU)からの離脱や核兵器、同性愛者の権利などの問題や中絶問題、「トランプの周りに壁を」などのスローガンを掲げる参加者もみられた。やっと本当の選挙活動が始まったみたいだ。11月までの選挙期間中の両候補の罵詈讒謗の激しいネガティブキャンペーン、あれは本当に選挙活動だったのだろうか。嫌気が差して何も考えられないくらいだった。怒号に似た激しい汚い、短い単語で突っ込みを入れて、聴衆(相手)にいやな思いをさせて、思考停止にさせる。これこそポピュリズムである。「メキシコ国境に壁を」「日本にアメリカが損をしている」「移民は敵」「いやな女」など、ほんのわずかのフレーズを何度も何度も怒鳴り上げる。人々がたとえば、難民を「敵」と見なせば、彼らの目的は達成されるのである。
ポピュリストは、聴衆に敵を示して、それを固める。それだけ。そして自分に聴衆をひきつける。テレビ時代に鍛えた能力かもしれない。それは上手い。しかし自分にはまともな政策も理論もないから、行き当たりばったり。そこで、創造的な政治は困難が伴うので、簡単な破壊行動へ向かうのが歴史上のポピュリストたちの行動であった。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は12日に発表した2017年世界人権年鑑で、米大統領選でのトランプ氏の勝利や、欧州での大衆迎合主義的な政策を掲げる政治家の台頭が人権への「深刻な脅威」となっていると警告した。(http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6724.php)
90カ国以上における人権状況をまとめた同報告書で、HRWのケネス・ロス代表は「トランプ氏や欧州のさまざまな政治家は、人種差別や外国人嫌悪、女性蔑視、移民排斥を訴えることで権力を手中に収めようとしている」と指摘。「彼らは皆、雇用を守り、文化的な変革を避け、テロリストの攻撃を防ぐために必要とみられるなら、民衆は人権侵害を容認すると主張している。人権を無視することは独裁政治への最短の道だ」と主張した。また、トランプ氏の選挙戦と英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票に向けたキャンペーンを引き合いに出し、不寛容政策の「はっきりした実例」とした。
人々が難民を「敵」と見なせば、彼らの目的は達成されるのである。私たちにはそこからの生活があるのだ。早く見極めなければならない。
今は、がっかりなどせずに「女性の強さ」を見せるときだ。
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