ノートルダム寺院がなくなった!
パリのセーヌ川沿いのノートルダム大聖堂(Cathédrale Notre-Dame de Paris、ノートルダム寺院とも)が2019年4月15日夜に大規模な火災で尖塔などを焼失した。1163年の設立だから、もう856年にもわたって、パリをパリたらしめる偉大な輝きを放ち、ゴシック建築を代表する華やかな寺院として、カソリック信者の本山として君臨してきた。それだけに今回の火災事件は、カソリック関係者だけでなく、フランス国民だけでなく、私のような一介の訪問者にも大きな喪失感を与えている。ローマ法王庁のフランシスコ法王も「ローマ・カトリック教徒およびパリ市民のために祈っている」と声明を発表した。
ノートルダム大聖堂に一歩足を踏み入れたあのとき、頭にしびれのようなものを感じた。これが西洋文化の真髄にあるのかと思った。アジア的ではないものということかもしれない。せむし男(ヴィクトル・ユーゴー作)が天井から覗いていそうなうす闇とばら窓のステンドグラスの輝きがあった。
あのときとは、1890年のことである。第2回世界女性会議がコペンハーゲン(デンマーク)で開催され、私も大阪府からの視察団の一人として、会議後北欧を回り旅行の最終日にフランス、パリに入った。憧れのパリ、華のパリだと心はおどった。モンマルトルの丘も凱旋門もシャンゼリーゼ通りもムーランルージュの灯りも夢心地だった。しかし翌朝空港へのバスから見た街を清掃しているのは、カラードの人たちばかりだった。そういう構造になっているのだと思った。
一泊したパリのホテルのロビーにビンテージなフランス人形がおかれていた。もうすぐ家族の元に帰るのかと我に返ったとき、どうしてもこのフランス人形を抱きしめたくなった。それで家に帰ってから長期の分割払いで写真の人形を手に入れた。未だ私の隣にいる。40年一緒にいる。
「未来を切り拓く女性たちのNPO活動:日米の実践から考える」紹介
概要:日米のNPO活動実践・教育研究および、女性の権利擁護運動に関わってきた二人の著者が、これまでのNPOを通じた女性の活動を振り返るとともに、今後、女性がNPOをどのように活用し新たな働き方を探っていくべきかについて、展望する。出版社、明石書店。ソフトカバー248ページ。2592年(税込み)詳細は、以下からご覧ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/toc/4750347787/ref=dp_toc?_encoding=UTF8&n=465392
本書を読んで:杉原 志保 (NPOサポートセンター事業部プロデューサー、N女プロジェクト代表)
1975年東京生まれ。中央大学大学院法学研究科修了。200近い市民活動団体の設立や事業展開に携わる。NPOサポートセンターで自治体中間支援拠点の管理運営や業務改善等の支援、府中市市民活動センターの開設コンサルに従事。2014年からは、社会貢献分野で働く女性たちが分野を越えて協働し、女性の問題等を解決するN女プロジェクト代表。協働ステーション中央統括責任者。中央大学法学部兼任講師。金谷千慧子との接点は中央大学での女性学の授業である。
ソーシャルセクターで働く女性たち(N女)は魅力的だ。生きていく上で直面したさまざまな社会課題を、楽しみながら解決しようとしている。誰もが生きやすい社会を願い、そのために恥ずかしくない仕事を、リーダーシップを発揮しながら実践している。
名声より、お金より、やりがいを重視するが、企業や自治体から転職したキャリアを生かし、採算性と事業性、公共性などを持ちながら組織運営を行い、エコシステムを構築しようとする視点を併せ持つ。
そんなN女たちにも悩みは尽きない。ソーシャルセクターの経営課題は「人材」と「資金」と言われて久しいが、その経営課題は変わっていない。ワークとライフの境が曖昧なので長時間労働になりがちだ。決して賃金は高いとは言えず、ライスワークとライフワークの狭間で悩むこともある。NPO法人の数はコンビニの店舗数とほぼ同数、任意団体を含めるとそれ以上だが、活動の実情はよく知られているとはいえない。ボランティア活動とイコールと思っている人もいるし、無償性の活動=お金をもらってはいけない活動と認識している人もいる。そうした誤解が、彼女たちのキャリアを不安にもさせてもいる。
今回の出版された本は、日本のNPOに関わる女性たちの活動の変遷、現状と存続に必要な要件が、海外の実例を交えて述べられている。条件は二つ、事業を行う組織の維持・発展させる「経営力」と、ジェンダー課題に直接的・間接的に関わる施策を改善したり制定したりできる「アドボカシー能力(政策力)」だ。行政に頼るのではなく、こうした公共政策をセクターを超えて生み出していけるよう、N女たちで連携・協働していきたい。
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