インド紀行 その2 ~インドの家庭訪問
2014/10/23
仁賀 順子(女性と仕事研究所研究員)
日本から入った「オートリクシャ」健在
デリーも車社会だ。狭い道路を隙間無く車が行きかう。車線があってもそんなことお構い無しに運転している。日本の道路では2車線に2台だが、デリーでは車線変更も含めて4台程度横に並ぶ。どの車も車体は傷だらけ。よく大事故にならないものと感心する。
私が子どもの頃、はるか昔50年前に田舎でよく見かけたオート三輪がたくさん走っているではないか。黄色と緑で塗り分けられたそれは「オートリクシャー」と名づけられた簡易タクシーだった。
道端には小さな店が林立している。小袋のスナック菓子が軒先から垂れさがり、水やジュースを売っている。バイクや車を止めて、男たちが休憩している。
デリーから郊外へ出ると、そこは広大な小麦の穀倉地帯が広がる。どこまでも緑の平野が続き山は見えない。道端に屋台のような店が連なる。ここでも休憩しているのは男だけ。運転しているもの男だけだ。女たちはどうしているのだろうか。
ガイドさんに聞くと、「女性は運転免許をとれない。1人で出かけられないので、用事がある時は、夫か夫の兄弟が車を運転して連れて行きます。」思わず「女は免許をとれないのですか?」と聞き返した。
ガイドさんはヒンドゥ教徒で農村地帯出身という。男兄弟は結婚後も親兄弟と一緒に一つ屋根の下に住んでいるそうだ。親・妻・子どもで総勢28人の大家族とのこと。妻たちは家事(牛の糞で燃料作りも含まれる)に親と子どもと夫の世話が仕事だ。外出は家族の男性と一緒でなければ許されない。ヒンドゥ教はインド国民の約8割が信仰している。また国民の半数は農業従事者だ。農村に住むインド女性の厳しい生活を聞いた気がした。
デリーやアグラの都会では、滞在中ほんの数人の女性ライダーを見かけたのみである。割合にして0.1%ぐらいだろうか。私の想像だが、女性ライダーはカーストを否定し平等主義のシィク教徒ではないだろうか?あるいは留学生などの外国人ではないだろうか?農村地帯では、運転する女性を全く見かけなかった。
農村地帯での女性
農村地帯で女性を見かけたのは、頭でものを運ぶ女性、市場で買い物袋を持ち歩く女性、農家の燃料になる牛の糞を乾かす女性、家族親戚で外出する際に車に便乗している女性だった。牛の糞は拾い集めて、刻んだ麦わらとこねて、丸く形を整えて乾わかす。それを重ねて小屋風な形に保存し、日常的な燃料とするのだ。重労働である。子どもと女性の仕事である。
インドの家庭を訪問する
シィク教徒のお宅で夕食をご馳走になる。シィク教徒は、男性が頭にターバンを巻いているのですぐわかる。女性はサリーではなく、膝下丈ワンピースにパンツをはく。家に入るなり驚く。床が大理石!大理石を多く産出するインドでは普通らしく、インドでは中流家庭とのガイドの説明。
3人の娘たちは結婚や仕事で家を出て行き、夫婦と夫の母親、お手伝いの女の子の4人暮らし。シンプルに整えられたお宅で、シィク教のグル(指導者)の写真がある。宗教が生活に根付いていると感じる。
長女と次女の結婚式の写真を見せていただいた。インドの結婚は女性側に多額の費用を必要とする。こちらのお宅でもその費用のために3階建て自宅の3階を手放し、その費用に当てたそうである。「Many many lost!」と笑って話された。
ヒンドゥ教徒のダウリー(持参金)の習慣は約30年前に法律で禁止されたが、今でも花嫁の持参金は必要とされ、慣習として根強く残っているそうだ。
持参金なしの結婚もあるそうだが、まだまだ結婚相手は親が決めるそうである。
チキンの調理を教えていただく。ぶつ切りの鶏肉を油で炒め、味付けは塩と数種のスパイスを入れて15分程度煮込む。スパイスは直前に潰して鍋に入れる。
次にチャパティを作る。豆と小麦の粉を水でこねて種を作り、種を丸く伸ばして、小さいフライパンで焼く。脹れたら均等に焼けるように重石で押さえつけながら両面を焼く。
スパイスを潰す道具はどの家庭にもあるようだ。
チキンはスパイシーでとてもおいしかった。日本人の口にも合うと思う。おいしいので、ソースをチャパティにもつけながらいただいた。空港でこの料理に良く似たパッケージを見つけたので買って帰り、自宅で作ってみたら同じ味がして嬉しくなった。パッケージには「Chiken Korma Sause」と書かれていた。
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