ヌードの画題が出ました
2014/10/06
どうしたものかと迷ったあげくの私のスケッチ
永年、画家(男性)とヌード(女性)の視点を批判してきました。しかしこのたびはヌードを練習しなければならなくなりました。どんなヌードだったら我慢できるのか。考え込んでしまいました。女性は男性の望むイメージを「ヌード」(裸ではない)という衣をまとわされて、描き手にも鑑賞者にも、見られる対象としてさらされます(覗姦)。男性はその欲情をキャンパスにまき散らして、芸術だといいます。そして男性が描くヌード画こそが高度な芸術だということになってしまい、逆に女性は本来創造的活動や思索には向いていないという男女の特性論が出来上がってしまいました。
確かに名を残す女性の画家はほとんどいません。女性が描くヌード絵画などないのです。そもそも裸で居る情景など日常生活ではほとんどないはずです。
しかし20世紀、写真の進歩はヌード絵画の猥褻性を減少させましたが、絵画は徹底的に女性の身体を切り刻んで破壊してしまいました(グロテスク!)。
少ないながらも女性画家の絵をみていくとやはり19世紀のシュザヌ・バラドンの肖像を描いたロートレックの作品は見事です。シュザヌは世紀末のパリでお針子をしていた母の私生児として生まれ、自身も子守りやお針子で生計を立てようとしていたのですが、このころのパリで貧しい娘が商売女になる一般的な道をたどらず、好きな絵の道に近づこうとドガ、ルノアール、ロートレックなど、一流の画家のモデルとなりました。17歳ころからは本格的絵筆をとりました。しかし彼女にはアカデミックな絵を学ぶチャンスはありませんでした。女に絵を学ぶことは許されていませんでした。
音楽家を愛し、画家と同棲し、私生児(画家ユトリロ)を生み、まじめに、そして奔放に73歳まで絵を描き続けて生き抜けたシュザヌ・バラドンの健康な身体は描きたいヌードでした。大きな足、握りしめた拳。筋肉質の堂々とした肉体は均整がとれています。(家人は「ウヮ― レスラーか」といいました)
参考:
若桑みどり著「女性画家列伝」岩波新書
多木浩二著「ヌード写真」岩波新書

関連記事
-
-
第17回洋画A展(2017/3/7~11)に出展します
第17回洋画A展に2点、出展します。 第17回 洋画A展 日程 2017年3月7 …
-
-
「100年」にうたう「君死にたまふことなかれ」
女性と仕事研究所は2004年4月で東京事務所設立5周年を迎えました。ちょっとした …
-
-
「魔女の秘密展」に行きました(天保山・大阪文化館)
しばらくこの欄を休んでいましたが、また再開します。 魔女には大きく2つのイメージ …
-
-
2024年秋、日本の政治と企業は変わるのか(その1) NPO活動を振り返る
NPO女性と仕事研究所がCSR(Corporate Social Respons …
-
-
新しい“うねり”を奏でてほしい(3)
85年を生きた。今なおNPOと女性の活躍を熱望する日々 最近の絵画作品を紹介しな …
-
-
上野精養軒のカレーライスと女流画家協会展
ずっと上野の森の精養軒のカレーを食べたいと思っていました。女流画家協会展の初回入 …
-
-
アメリカの変貌に驚愕!
2024年は世界の“選挙イヤー”でした そして2025年1月20日、トランプ氏の …
-
-
フェミニズムとわたしと油絵(2013~2023)(その12)
1 書籍完成! かねてより注力していました『フェミニズムとわたしと油絵―「描かれ …
-
-
展覧会を終えて
秋の展覧会から絵が帰ってきて、ダンボールを片付けたところです。すぐさま原稿に取り …
-
-
パーキンソン病にips細胞による新しい治療
さまざまな細胞に変化する人のips細胞(人口多能性幹細胞)から脳の神経細胞を作り …
- PREV
- 女性の力を活かすこと
- NEXT
- 高橋美加子社長の講演から