フェミニズムとわたしと油絵(2013~2023)(その2)

   

趣味の油絵を再開して10年になるのをきっかけに、「フェミニズムとわたしと油絵」というタイトルで人生のまとめをしているということを前回のブログで報告いたしました。その後引き続いて文章化を進めているのですが、いま突き当たっている問題があります。それは、「フェミニズム」や「ジェンダー」という言葉に対する世代間の受け止め方の違いや「フェミニズム運動」「ジェンダー平等」に対するや理解の違いをどう克服するのかという問題です。
2000年を契機に女性政策を中心に起こったいわゆるバックラッシュを経験している私のから言えることは、世間のごく一部の風評というかいわれなき非難だと思っていたことが、実は後々まで影響を与え、少なくともここ20年ほどつづく日本の女性の地位向上の停滞を招いてきたということが、よく分かったということです。それだけに今「フェミニズム」や「ジェンダー」に違和感や嫌悪感を抱いている若い層を中心とする諸相が存在しているとすれば、それもよく理解し、分かり合える道を探っていかねばならないと思っているのです。
バックラッシュとは
フェミニズムに対する猛烈なバックラッシュ(揺り戻し・逆襲)は、21世のスタートとともに表面化しました。「女性差別撤廃条約」が1985年批准年され、1996年には「男女共同参画2000年プラン」が策定されました。このプランに基づいて女性政策実現の場、女性の活動拠点として女性センターが整備され、自治体でも行動計画が策定され、フェミニズム運動は推進に向かいました。1999年6月23日には男女共同参画基本法が施行され心躍らせたその矢先に、バックラッシュの嵐が始まったのです。その後、明白に、露骨に、執拗に、全面的に阻止する動きを繰り返します。そしてその後には絶望にも近い悪影響を与えてきました。
バックラッシュは、審議会がまとめた民法改正要綱の「選択制夫帰別姓制度」に「家族の一体感を壊す」と反対の意見を出しました。今どき、なぜそんな古めかしいことをいうのだろう。なぜ行政がやることに国会議員が反対するのか、私には理解できませんでした。よく話して理解してもらえば、わかることだ。一過性のことだろう、様子をみよう。少なくとも私は、そう思っていました。しかし、それが十分準備されたものだと知った時には、すっかり後手に回っていました。
ジェンダー、フェミニズムは過激だと
全国の地方議会では、小・中・高における「男女混合名簿」の廃止や性教育、ジェンダーフリー教育への批判が始まりました。各地の男女共同参画条例の制定にバッシングが高まっていきました。裁判も起こりました。大阪府豊中市は、2004年3月、男女共同参画推進センター『すてっぷ』の非常勤の館長、三井マリ子を雇止めしました。
バックラッシュ陣営は、「新しい歴史教科書をつくる会」や「夫婦別姓に反対する会」や「日本会議」などと行動をともにしていました。この会は、1997年に天皇制国家の再建、憲法改正を主要目標として結成され、「家族の絆、日本人の美徳、国への誇りと愛情」を取りもどす世論形成をしていくと宣言していました。
しかしこの度の安倍元首相の暗殺事件以降、自民党保守派勢力と(旧)統一教会系の団体との密接な関係がより明確に露わになってきました。2005年には、安倍晋三が座長、山谷えり子が事務局長を務めた「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が発足し、夫婦別姓、男女共同参画条例、性教育、男女混合名簿などに異議を唱えました。根源(元凶)はまさにここにあったのでした。
ジェンダーは国際的用語
ジェンダーという言葉は、1995年の第4回世界女性会議で採択された北京宣言及び行動綱領において、生物学的な性別を示すセックスに対して、社会的、文化的に形成された性別を示す概念として使用されてきました。しかし、バックラッシュ派は、これは人間の中性化を目指すという意味があるといい、「ジェンダーフリー否定」を叫びました。内閣府男女共同参画局は、2006年1月31日、都道府県・政令指定都市男女共同参画担当課(室)宛に、今後は「ジェンダーフリー」を使用しないようにと事務連絡を出しました。こうしてジェンダー平等の推進派は、次々と手・足・口を縛られるようになっていったのです。
国際基準のジェンダー平等を真っ向から否定し、フェミニズムが積みかさねてきたものを徹底的に崩した政治主導のバックラッシュの影響は計り知れないものがあります。日本のジェンダー・ギャップ指数が世界最低レベルなのも、他国がジェンダー平等に取り組んできた時間、その反対方向に後退し続けた結果といえるでしょう。日本が失ってきたものの大きさを私たちが知る過程になったのでした。アートの世界でも2000年以降のバックラッシュの影響で、10年以上に及ぶ空白の期間が生まれてしまったといいます(内海潤也「美術手帖」2021.08 p122)
「フェミニズム」や「ジェンダー」になぜ「嫌悪感」や「違和感」が生まれるのか
このほど国連は(2022年8月7日)、ジェンダーの観点から持続可能な開発目標(SDGs)の達成状況をまとめた報告書を公表しました。世界各国で男女平等を保障し、女性に対する差別を禁止する法律が整備されるまで、現在のペースだと286年かかる恐れがあると指摘したのです。現状ではSDGs達成期限の2030年までに男女平等を実現するのは困難だとして、格差を是正する行動を各国に呼びかけました。背景にはコロナ禍がありますし、アフガンの女性差別問題もあります。
ところでこの記事が出るや、ネットではこの国連の呼びかけに対して非難というか中傷というか、的外れの女性へのヘイト意見が踊り出しました。以下はほんのその1部ですが、バックラッシュの折とよく似た光景が広がっています。
まず、セックスとジェンダーは違う概念だということを知ってか知らずしてか、故意にかもしれないですが、セックスに一元化しています。さらに雌雄同体が平等などありえない一律化を「平等」と非難しています。「平等」は多様な生き方を選べる社会の中で、すべてが生きやすい生活を確保することです。
以下のような声を挙げる人たちは多くいるのでしょうか。この人たちは何にそんなに怯えて今の時代(男性優位社会)にこんなに固執しているのでしょうか。あるいは、押し寄せて来る男性への貧困問題や昔なら大威張りで上司かぜやおやじ風を吹かせられたのに、それも今ではできないのを残念がったりしているのでしょうか。そんなに男性は女性に比べて能力が高いと何ゆえに思うのでしょうか。子ども産むことは平等の扱いをできないことなのでしょうか。以下のようなコメントの中で「これじゃ日本は何年かってもいまのまま変化しない」と嘆いている声もあります。もちろん「僕フェミニストです。それが何か?」という声もありますが、これらのフェミニズムに対する嫌悪感は、現状に何らかの不満を抱いている人には、きわめて伝搬しやすい、同調しやすい誘い水のような存在です。それ等の気持ちも含めて掬い取って理解してもらう丁寧な方法が非常に重要だと切に思います。
●男女の違いを認識したうえで、「何をもって平等か」を定義すべきだ。
●体力の違いや、出産、育児など違いを明確にして平等を定義しないと、「平等」を耳障りがよく都合が良い言葉として使われる。
●フェミニストの方々、お疲れさまです…
●じぇーんだー♪ ひっとすっじ♪ さーんびゃっく ねーん♪ 🎤
●じゃあ共通の何かって?名誉があるじゃないか?多かれ少なかれ人類共通の弱肉強食の逆を!
卑怯者の根絶を!目指せば自ずと
●古来、日本人の大半は農民だった。その農民の嫁は出産の数日前まで田んぼに出るのが当たり前の共働きだから男女で上も下もなかった。その一方、男尊女卑なんてのは明治になって日本の一部の階層でしかなかった武家や西欧の風習が広まったんだが
●普通に女人禁制あったんだから中世から男尊女卑はあるでしょ。農家も商人も跡継ぎは男だし。
●神様が作った差だから、能力を埋める改造技術開発に300年というのはわかる
●そもそも同数となるのが正しいのか?
●違う生き物なんだからどうやったって格差は出るよ
●それな。そういうのを生かして受け入れあって生きていきなさいという神様の思し召しなのに
●雌雄同体に進化
●無限に生きる。分裂する。同化する。神!
●どうせ数年後には飽きてジェンダーも語られなくなるでしょ
●完全なジェンダーなら性別はなくなっている。そんなのは神しかいない。
●雌雄同体ならそもそも単一生殖つか、ただの分裂で、遺伝子が劣化するから絶滅もうね馬鹿かと
● 君んとこの中学校では「雌雄同体の植物は絶滅する」って教えてたん?なんとまあ
●300年後にはちんちんとまんまんを強制で取っちゃうのか 怖い怖い
●300年後にはそもそも人類が滅亡してるだろ これだけ自然破壊してるんじゃな 下手すりゃ数年後だぞ
●300年後には女性の身体能力が男性に追い付くってこと?
●同性生殖か単体生殖 あるいは生殖を廃止してクローンのみ 個体差を無くすまで平等は実現しない
●男が子供産めるようになってるな
●イスラムが300年ぽっちで折れるかね…
●1000年以上もアラーだ聖戦だ女は奴隷だとか言ってる連中にはどだい無理な話だわな
●その頃国連ないだろ 宗教とかテロで理不尽に虐げられる以外まで正そうとする意味あんの?
その土地に任せてよくないか
●その前に人類が亡びそう
●創造主のルールを超えるね。その時代には、もはや人は神と等しくなる。
●DNA改変して性別無くすのか?wwwwwwww
●ミジンコならどちらにもなれるどうでもいい時はオスが増えて環境が悪くなるとメスに変わる。
●トイレも銭湯も入口一個になるってこと?
●スポーツは男女一緒にしたら男が勝っちゃうよ、良いんかな?
●悪魔主義者達の考えるアジェンダきもすぎる。
●環境変化が無いと、メスだけになるんだよな
●スポーツ界で元男のジェンダーさんが女の世界記録破りまくって欲しいわ。
●男が子供産めるようになるまで無理だろう
河野真太郎著「新しい声を聞くぼくたち」より
2022年5月に出版された上記の本の帯には以下のような紹介があります。
『このタイトル「ぼくたち」=複数の男性からなる均質的な集団がいて、外からってくる「新しい声」=フェミニズムの声?に耳を傾ける、ということにとどまるものではません。それが求められているのは確かです。現在ジェンダーやフェミニズムの問題されていることのほとんどは、実は男性問題であり、新たなフェミニズムが波となっている現在、男性たちがその「新しい声」に耳を傾け、自分の問題とてそれに取り組むとは絶対に必要です。ですが、そのような男性主体はひとつのもの(均質的なもの)ではありえません。男性たちを分断させる複雑線が走っており、それが何なのかを、安易な解消を拒みながら慎重に見ていく必要があるしょう。ですから「ぼくたち」というのは最初から与えられた均質的な集団の名前ではないのです。「男性問題」の解決は、そのような声に耳をふさいで聞こえないふりをすることからは生まれないと信じています。』
そしてもう一方のページは、一段と大きな文字で重要な一言が記されています。「変わっていく世界と、ぼくたちのいらだち。」「与えられた剣と鎧はどうやって手放したらいい?」と。
女性も男性もフェミニズムは重要なテーマです。なぜなら全ての人が自分らしく生きていく権利をつくりあげるのがフェミニズムなのです。アプローチの方法はいろいろあるでしょうが、全ての人が自分らしく生きていく権利をつくりあげるのがフェミニズムであることを根底において、そのことを知っていれば「フェミニズム」「フェミニスト」に対してマイナスなイメージを持つ人は減るのではないでしょうか。前を向きましょう。

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