子ども連れ去り事件の増加とハーグ条約

      2014/10/23

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Japan Times 2011年12月3日記事に関連して

1 女児連れ帰り、国際離婚の日本女性が米で拘束

米国でニカラグア出身の男性(39)と離婚した兵庫県の女性(43)が、離婚訴訟中に長女(9)を日本に連れ帰ったとして渡米時に身柄を拘束され、男性の親権を妨害した罪に問われて刑事裁判を受ける事態となっていた。米国の裁判所は離婚訴訟で父親に長女の親権があるとしたが、日本の裁判所は条件付きで女性を親権者と認定。日米の裁判所で判断が相反していた。国際結婚が破綻したあと、子どもが国境を越えて誘拐されるケースが増加している。日本政府は5月ハーグ条約の加盟を決めたが、未だハーグ条約に加盟していない。日本は主要8か国先進工業国のただ一つ加盟していない国である。現状の国内法では、単独親権の原理を厳守しており、多くの父は離婚後子どもとのすべての接触を失うことも珍しくない。

2 ハーグ条約「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」

1980年採択。多国間条約。1983年に発効。オランダのハーグ国際私法会議で締結されましたが、日本は批准(加盟)していません。
ハーグ条約の目的は、国境を越えて子どもを不法に連れ去る、あるいは留め置くことの悪影響から子どもを守ることにあります。国際結婚した夫婦が離婚する場合、親が他方の親に無断で子を国外に連れ去ることがあり、連れ去られた国側が返還請求できない場合があります。この条約では、適切な管轄裁判所で親権に関する決定を下すことができ、常居所がある国に子どもを速やかに戻すための手続きを規定しています。
いずれの親にも、子どもと面会する権利の保護を保証しています。しかし連れ去りが起こった時点では、子どもの定住国への帰還を義務づけます。子どもが16才に達すると、この条約は適用されなくなります(第4条)。

3 ハーグ条約批准国・非批准国

現在86カ国(2011年10月)が同条約に加盟。北米、ヨーロッパ、オーストラリア、南米、南アフリカ、などの西洋文化圏の国のほとんどがこの条約を調印・批准しています。主要国のうち未加盟国は日本のみです。ロシアは2011年11月加盟しました。
アメリカは、日本は人権に関しては後進国と見なしており、「離婚した日本人妻の子の連れ去りは拉致である」として、「日本は拉致において北朝鮮と変わらない」とまで批判し、日本にハーグ条約への早期加盟を要求しています。
日本をはじめとしてアジア・アフリカ・中東のほとんどの国は、この条約に調印していません。加盟・非加盟の違いは、宗教・制度・性役割観の違いが影響しており、途上国では社会的・経済的な理由から父親に親権が与えられることが多いのです。日本では昭和40年以前は、経済的に余裕のある父に親権を与え、貧しい母の環境は子の福祉に反する、とするのが主流でした。その後は、子育ては母親の責務として母親に親権を与えるのが近年の流れです。戦前の家制度のもとで制定された民法ですから、「家」に誕生した子どもは、父親、跡取り息子が親権者というのが主流でした。イスラム社会では男性のイスラム教徒の子はイスラム教徒であるとされ、その親権は父に属するとされています。

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4 共同親権

ハーグ条約は「共同親権」か「単独親権」ということと関わりがあります。ハーグ条約締約国の中に共同親権を認めている国が多いからです。日本の法律では、協議離婚であれ、裁判離婚であれ、父母の一方を親権者と定めるものとされています。

親権者が決定されなければ離婚届は受理されません。日本では共同親権が認められておらず、定められた親権者が単独で親権を行い、親権者とならなかった親は、親権者の権能をまったく行使することができません。日本の場合には、二度と子どもと会うことが出来なくなる可能性があります。一方、共同親権は、離婚してもなお、子の親権について双方が分担し権利と義務を有するという考えです。
共同親権を認めている国は多く、共同親権の社会システムが進んでいます。アメリカは州により法律が異なりますが、アメリカでは日本の親権に当たる監護権を父母の双方が持ちます。共同監護法は、現在ほぼ全米各州で採用されており、ほとんどの州で共同監護(共同親権)が認められています。父母の離婚後も子が父母双方と関係を持ち続けることが、子の健全な成長にとって必要であるとの考えに基づいています。 子どもを第一にとの考えで、様々な形の共同監護が実施されています。アメリカの共同親権の現状は、約7割の子は母と生活し、父とは週末に泊りがけまたは泊りなしで会っています。離婚後、元夫婦に対して憎しみを乗り越えて親として協力するための種々の教育的なプログラムもあります。
「父母教育プログラム(Parent Education Programs)」やDV問題や児童虐待の申し立てをしている家族には「面接交渉の制限」)また、監督者付きで子どもに会うことの出来る施設「Visitation Center」などの社会システムが機能しています。
(2012年1月23日 ハーグ条約の加盟について、法制審議会で、加盟への関連法案の要綱案をまとめた。2月にも小川敏夫法相に答申。政府は24日召集の通常国会に法案を提出する方針で、会期内の成立を目指す。実は私の友人にも悩んでいる人がいる。)

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関連法案の要綱案をまとめた法制審議会のハーグ条約部会=23日、法務省

 

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