ニートの男女比とジェンダーについて
2015/07/19
NEET(ニート)=Not in employment, education or training
ジャパン・タイムズの記事を読んで
元記事
OECD(「Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構」)は2015年5月27日、男女別(15~24歳)のNEETのデータを発表しました。それについてのROBERT J, SAMUELSON(Japan times 6月8日」の意見を読みました。日本の場合は、ジェンダーの視点でOECDのデータを読む必要があると思い、コメンしました。
NEET問題とは
筆者は、NEETは国の政策の犠牲者だといい、以下の3点のようなマイナスがあるといっています。私もそのとおりだと思います。
1. 「NEET状態は、若年者個人としては将来への不安要素となり、自分に自信をなくしてしまうことになる。
2. 親からの独立が遅くなり、結婚や出産、家の購入といった消費行動にマイナスを及ぼす。
3. さらに深刻なのは国家的に税収入が増えないし、将来、福祉財政が膨張するというマイナスがある。
NEETという言葉の発祥はイギリスです。当時(1999年)ブレア首相は、教育の重要性を叫び、職業教育を中心のコミュニティカレッジを大幅に増やし(大学を改変した例も)、コネクションズという若者支援の総合組織を無数に増やしました。16歳から18歳までの若者が、教育にも仕事にも職業教育にもかかわっていない場合は、ギャップ期間(6ヶ月)内にその状態をなくそうと、労働政策に力を入れました(Bridging the GAP)。
その後日本も含めて世界中にNEETという言葉が広がりました。OECD調査でも、NEETと表記しています。年齢はイギリスと違って15~24歳です。OECD全体で3900万人を超えており、平均14%ということです。
男女別で見ると、下図の青い棒が女性のニート率、ひし形マークが男性のニート率です。日本は真ん中辺りの23位です。少し見にくいですが、女性のニート率が高いのは、左から1位インド、2位エジプト、3位トルコなどいわゆる女性活躍の後進国に多く、日本も女性のニートの方が多い国です。
先進諸国は大体男女とも違いはありません。男性のNEETが多いのは、イスラエル、カナダ、フィンランド、スウェーデンなどです。
日本のニート問題とジェンダー
このOECD調査では、日本は23位で、女性の方にNEETが多くなっています。ところが、私たちの周りでは、「ニート問題」というと、中年にもなろうとする男性が引きこもりで長い年月を経つという状態を思いがちです。「男が仕事もせずブラブラと」という叱責の目も感じます。実際NEETの支援活動をしている人は、女性も多いのを知っているのですが、NEETは男性が多いというイメージがあります。
日本のNEETの定義は、まず年齢が15~34歳ととても幅広いのです。数については2010年の厚労省の実態調査(15〜39歳対象)では60万人。予備軍がおよそ155万人いると推計しています。男性の方が多くなっています。(男性34万、女性18万人:この数字は34歳まで)。
日本のニートという言葉も、発祥はイギリスなのですが、定義や対策はかなり違います。
第一に日本の場合は、「教育、雇用、職業訓練、いずれも受けていない」という要件に加えて、「職探しをしていない」という要件(職安登録)が加わります。このため、失業者、仕事を探して職安通いをしている失業者はニートには入れません。
第二に、日本の場合、年齢層を広くとって、15~35歳(場合によっては39歳)まで拡大しています。
第三に、大きな問題は、女性の家事手伝いと専業主婦を除外していることです。
この定義からわかるように、目標が違います。
イギリスやOECDでは、若者を仕事につなげる労働対策なのですが、日本の場合には、女性にはなるべく家事や育児・介護に縛りつけようという意図も見えますし、「引きこもり状態者」を自己責任として、教育からも労働政策からの切り捨てるという態度が見られます。
年齢層を幅広くとるのは、専業主婦を含めないことに大きなねらいがあります。日本では、どうしても女性は、仕事より家庭という社会通念がいまだに残っており、専業主婦は仕事をしたい人とはカウントされていません。専業主婦といわれる中には仕事をしたくても出来ない人もいます。子育てや介護をしている人もいます。
学卒時に就職できなければ、企業は新卒中心の採用なので、なかなか仕事にはたどり着けません。女性は、学卒で就職できなければ、「家事手伝い」として「結婚を待っている」状態として、労働政策の対象にはされないのです。これも時代遅れの考え方だと思います。女性が仕事を得るのはいつも後回しにされるのです。
その意味で、NEETの定義ひとつにもジェンダーの視点で見つめなおさねばならないのです。
若者と女性への仕事支援
これからは若者と女性の力が重要だという声もよく聞きます。労働力人口はますます減少しています。男女あわせて何十万人という潜在的労働力人口を、ニートとして仕事の支援から対象外とするのは、そんなことしてていいのですかといいたいところです。
彼らには特化した労働援助が必要なのに、得られないままに、ニートと呼ばれて蔑まれたり、自己責任で切り捨てられていいのでしょうか。
ニートに対して「働かないのでぶらぶらして」とか「仕事はいくらでもある」「えり好みをするから仕事が無い」という人がいますが、ある仕事というのは非正規が圧倒的に多いのです。非正規雇用で働いている人は、ニートにも失業者にもなりませんが、その中には本当は正社員で働きたいのに仕事が無いので、しょうがなく非正規で働いている人がたくさんいます。女性もそうです。やむなくパート、やむなく派遣というのが実態です。
今回のOECD報告で、日本のニート問題に対して、「日本のニートは高学歴」だが、「学校から仕事へと円滑につなげる仕組み作りが必要」だと忠告しています。まことに的確な忠告だと思います。きめ細い、一人ひとりに寄り添った仕事支援策を一日も早くと願います。
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