2024年秋、日本の政治と企業は変わるのか(その1)   NPO活動を振り返る

   

NPO女性と仕事研究所がCSR(Corporate Social Responsibility)活動を始めたころから今を探る


経済の停滞30年、それは政治の停滞30年
日本経済が停滞して、すでに30年以上が経過したと言われています。そしてその傾向は深まるばかりです。バブル崩壊(1991年)後の経済政策はことごとく失敗してきています。構造改革をと叫ばれても、失敗が続くばかり。70年代以降の成功体験から抜けられず(注:相対的に貧しい経済から世界における最富裕国への仲間入りを果した。追い付き型成長局面における順調な成長が無限に続くことは有り得ず必然的に成長は減速した:NIRA研究論文2011)、もはや製造業中心、大量生産、輸出中心は通用しなくなっているに、新たな産業構造への転換を「政治」ができなかったのが原因だと思います。①グローバル経済下に成長著しい非製造業産業へのシフトができなかった ②人材の多様化(女性を含んで)と新たな技術・職業教育・経営戦略が図られなかったことが原因だと感じています。
労働力の再配置に必要な失業者の所得保障や再就職のための職業訓練に向けた予算措置がなされず、グリーン関連・医療・生活関連などの新しい産業に対する技術支援もできなかったのです。1965年オリンピック後の景気悪化から始めて、赤字国債発行が発行され、その後ずっと財政赤字が膨らみ、いまや、国の借金は1200兆円にまでなっています。さらに人口減少(働き手も高齢化する)や高齢社会での社会保障費の増大などさまざまな危機が迫っています。いまさら、赤字国債を増やすだけで、乗り切ろうなど、そんな悠長なことを言っているときではありません。

「政治が三流なら、経済も三流になる」
これは経済の失敗だけが原因でなく、時代と環境変化に適応できない霞ガ関的政治がだらだらと続いていることが原因です。誰も経済の失敗に責任を取らないまま、政府だけが圧倒的力をもって仲間うち中心の政治を続けています。マスメディからそれを非難する声はありません。「政治が三流なら、経済も三流になる」(石丸発言)のです。
近年の日本の国際競争力の低下は目に余るものがあります。生産能力は低下する一方で、現在世界34位にまで落ちています。新しい価値観をなかなか受け入れない国民や企業が蔓延し、失われた30年が過ぎたいま、日本はこれから失われた40年、あるいは50年を歩き始めているのかもしれないのです。そのためには、何よりも「従来」の終身雇用制度・企業内職業教育ではない、新たな産業開発のための進取の気性に富む人材育成が何より重要だと思っています。女性も男性も何度でも仕事を変えてキャリアを向上させられる企業外での職業教育制度、新たな産業(グリーン産業・生活産業など)への転換が重要です。その前提にIT技術のへ普遍化や安定・安心な企業への投資制度の提供が重要だと思います。何度でもやり直せる、キャリアを向上させる職業生活の確保はどんなにか、人々に安定感と幸福感をもたらすことでしょう。それこそが「政治の三流からの復帰、経済の三流からの復帰」になると思うのです。


カナダ・バンクーバーの職業技術大学をスタディツアーで訪問した(左)折の年賀状

社会的責任活動CSRと企業の社会的責任投資(SRI)の係わり
1990年代はまだ、日本は世界に歩調を合わせて成長しようとしていた時代でした。この度はその期にさかのぼってみます。NPOとして企業とかかわりながら、女性の政治・経済分野で飛躍を熱望しながら実施していた「社会的責任活動CSR(Corporate Social Responsibility)活動」とやり始めたが、あまり進まなかった「企業の社会的責任投資(SRI)」のことを振り返ってみようと思います。時期的には1990年代から2000年前半にあたります。
NPO女性と仕事研究所は、東京を中心とする大企業の「女性に開かれた企業調査」を始めていました。東京に事務所を置くと、事業の範囲は自治体のコンサル・調査事業だけではなく、企業や国などへ広がっていきました。この企業評価、企業表彰事業は、アメリカのNPOカタリストの「女性に開かれた企業表彰事業」にヒントを得たものでした。それが経済学者谷本寛治氏(一橋大学大学院商学研究科教授:当時)の目にとまり、CSR研究会にお誘いを受けました。そして研究会の終了後、『DSR経営―企業の社会的責任とステイクホールダー』としてまとめられ、私も第2部、第5章『女性とCSR』として執筆させていただきました。


谷本寛治教授はいいます。「1990年代以降、企業の社会的責任(CSR)活動は大きく進展してきました。特に、グローバル化の進展とともに、企業は環境問題や人権問題など、社会的課題に対する責任を果たすことが求められるようになりました。2000年代に入ると社会的責任投資(SRI)の広がりにより、CSRは企業評価の重要な基準となっています」と。特にアメリカでは、この社会経済システムの持続可能な発展を求める潮流を作ってきた原動力にNPOの影響力が大きいのです。環境・社会の領域で、監視、調査、制作提言をする専門集団としてのNPO・NGOが社会的支持を受け、インターネットの広がりとともに社会的・政治的影響力を高めていったのです。しかし日本ではNPOがそこまでの実力を備えていたかというと、まだまだ脆弱だったと言わざるを得ないと思います。

企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)活動
1990年代から広がったCSR活動は、日本でも大きな影響受けていました。企業が儲けるだけでなく社会的責任を持つという意味について本格的議論が始まっていました。
ここからの文章は谷本寛治編著『csr経営―企業の社会的責任とステイクホールダー』中央経済社2004年8月刊を参考にしていきます。
企業の社会的責任(CSR)とは、「企業は利益の追求だけでなく環境や人権に向けて配慮した行動を実践し、1.法律や社会規範を遵守すること、2.企業情報を開示すること、3.企業活動の透明性を高めること、4.顧客・従業員・株主・地域社会などへの説明責任を果たすことの4つを行って、信頼性を高めていく必要がある」と言う考え方です。企業が、利潤の追求のみならず、株主以外の従業員、地域社会などのステークホルダー(利害関係者)との対話を通じて社会的公正や環境などに配慮し、持続可能な社会の発展に貢献する取り組みのこととされています。しかし、この当時から、日本とアメリカやヨーロッパではCSRに関して温度差があるなと感じていました。
日本では、企業評価に関しては、経済的利潤を重視する傾向が大きいのに反し、アメリカ、欧州では、人権問題や環境問題の重視が多く指標になっているという印象があり、さらに、「企業は株主のもの」という考えが当たり前であることや、株主を中心としたステークホールダーがCSR活動に関心が高く、SRIを「未来への投資」と考えていること、また「企業の社会への影響に対する責任」と企業への投資が密接につながっていることがよくわかりました。そこでは、企業活動と地球環境への取り組みや労働者(児童労働や女性の管理職比率)を大切にすることを企業活動の根幹として捉えた取り組みが進んでいることにも気づき、日本の経済指標を中心とする企業評価との違いがよく分かってきました。
2024年9月29日の日経新聞で世界の投資家を束ね企業に統治改革を求める組織、国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)のジェン・シッソン最高経営責任者(CEO)がも日本政府に対して、取締役会の改革をさらに進め、投資カとの連携をさらに密にするよう求める記事が出ています。やっぱり現在も日本企業の内向き志向は続いているのだなーと感じました。


日経新聞2024年9月29日朝刊
本日は、この辺で終わります。続いてその2をお話します。

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