森喜朗(83歳)氏の女性差別発言から1か月半、何が変わったか

   

「わきまえておられる」に立ち向かおう

東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長森喜朗氏(83歳)の女性差別発言から1週間で、日本は少し動いた。森氏は2月3日の日本オリンピック委員会(JOC)評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言した。これが女性蔑視と批判を招き、性別を問わず多くの人々が違和感を抱いた。ラグビー協会の理事稲沢裕子氏は「ああ、私のことを非難している」と感じたと報じられた。「あれは私のことだ」と思った女性は多いと思う。私もそうだ。宴席で女性教員の私の前にお酒のセットが置かれた。ご飯のお櫃を置かれたこともある。私がおしゃくに回る、男性教員にご飯を、ということに「わきまえる」ことが求められた。

組織委の女性理事を誉め言葉の意味で使った「わきまえておられる」との表現こそが、差別の温床を象徴する言葉だという発言もあった(2月10日毎日新聞為末大氏インタビュー記事)。その間もSNS(ネット交流サービス)では「わきまえない」「沈黙しないで」などのハッシュタグが拡大した。その場で文句を言わず、笑いでごまかし、その場を納める女性は誉め言葉「わきまえておられる」を使ってもらえるのである。面を向かって「これって女性差別でしょ」というのは「わきまえていない」のである。「わきまえている」というのは、一歩踏み出そうとする行動を思いとどまり、差別を握りつぶす、なかったことにすることである。「わきまえる人」が男性社会のなかでは歓迎されてきた。これを打ち破る勇気を持たねばならない。これはとても覚悟がいるが重要である。

それから8日経過した12日森会長は辞任し、後任を自ら決めた。「辞めさせられる人が、自分の後任を決めてどうするのよ、まして相談役として影響力をとどめるって、そんなのないわ」と思った瞬間に、世間では「それこそ密接決定だ」言い始めた。その後未練たらしい辞任会見をして、そこでも「見解の相違だ」と女性差別にはならない旨を言い残して去った。私もブログを描こうとしたが毎日毎日、あれよ、あれよと間に刻々と情勢が変わった。現在、女性(橋本聖子氏)が日本オリンピック組織員会の会長になり、女性理事4割の目標を達成した。今回は日本も素早く少し動いたではないか。「あきらめないでやろう」「やっぱり勇気を出して言おう」「何よりも行動しよう」「わきまえない女でいよう」と再確認した。

森氏のような発言は、日常的に起こっている。この年代の男性の会話で笑いを取ろうとするネタになるのが「女性の話」である。(家内が、女子学生が、マダムがなどを使う)
これらの女性に対するハラスメントは一つひとつ独立した問題ではなく、すべてが構造的につながっている。女性を軽んじる社会の風潮がありとあらゆる分野に浸透し、強いてはより重大な家庭内暴力、性的虐待や強姦にもつながっていく。

しかしできることは、たくさんある。男性たちが女性を蔑むような冗談を言う場合には、一緒になって笑わないようにしよう。セクハラ発言をこれまでのように無視したり笑いでごまかしたりしないようにしよう。積極的に言葉にしては発してみよう。差別体験を家族や友人と共有し、周囲の人々の意識を変えよう。差別意識は、誰の心のなかにもある。男性優位の社会通念や価値観を刷り込まれ、内部化していることに気づこう。それに気づいた人が声をあげて変革していくことを応援しよう。これまで、当たり前と思ってやり過ごしていた日常のささいなやり取りに、疑問を持とう。みんなで恐れずに声をあげて、女性も男性も生きやすい国に変えていこう。

新体制の組織委員会は「中止」を決定し、実行できるか

女性理事4割を達成した新体制の東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の今後の課題は、どのようにして「東京2020」の開催中止を実行していけるかである。実際にはオリンピックへの中止意見は多い。(オリンピックの開催か否かを決めるのはIOCで日本は、中止ではなく返上するという選択肢しかないらしいが)。

公益財団法人「新聞通信調査会」(西沢豊理事長)の3月20日の発表によると、新型コロナウイルス感染症が世界的に収束していない中での東京五輪・パラリンピック開催の是非を海外5カ国で尋ねた世論調査では、「中止すべきだ」「延期すべきだ」との回答の合計が全ての国で70%を超えたという。特にタイでは95・6%、韓国で94・7%に達した。昨年12月~今年1月に面接か電話で調査し、各国で約千人ずつから回答を得たという。他に中国は82・1%、米国が74・4%、フランスが70・6%(共同)である(共同)。日本でも、オリンピック開催に反対する意見は7割に及んでいる。またワクチン接種もおぼつかないなか、国民の命を守るためには、中止しかないと思われるが、その困難な課題を、国民の納得の下に堂々と実現できれば、新体制は動き始めたことになるだろう。

あるいはもう一つ、今の「金儲け主義」ではないオリンピック、「アスリートファースト」、「ジェンダー平等」のオリンピック、など新しい時代のオリンピックが開催できるよう知恵。技術を集められたら、そりゃー新体制の組織委員会は素晴らしいと思う

現在のままのオリンピックでは、衰退は目に見えている。この時期に、オリンピックのあり方をあらためて振り返る必要がある。天井知らずの規模・経費の膨張と、これもとどまるところを知らない豪華さと華やかさの競争。オリンピックはもはや、スポーツの祭典としての本質を打ち捨て、巨大ビジネスの舞台として、すべての面で商業的な成功が優先されるイベントとなってしまっている。そのゆがみに嫌悪感を持つ人は少なくないが、経済面における繁栄がそこから関係者の目をそむけさせてきた。

そこに、社会のあり方や仕組みそのものを大きく変えてしまったコロナ禍である。ともに集まることができないという、この果てしないほどの危機状態は、「オリンピックのあり方を根本から見直す好機でもある。いまこそ、すべてのスポーツ人、オリンピック関係者は、オリンピックのゆがみに正面から向き合い、あるべき新たな将来像を打ち立てるべきではないだろうか。しか し時間がもうないかもしれない。

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