若者のニューヨーク1950~60年代から
2014/10/06
英字新聞2009Jan.11thと2010.Heb.7 thから、『ライ麦畑でつかまえて』の著者J.Dサリンジャーが91歳で1月27日老衰で死亡したとの記事とオードリー・ヘプバーンが演じた映画「ティファニーで朝食を」(トルーマン・カポーティ著)が制作からの50年を迎えて、未だなお好調な売れ行きであるという記事から、1950~60年代のニューヨークの若者像がよく見えます。
1951年『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(『ライ麦畑でつかまえて』)で一躍アメリカ文学を代表する作家の仲間入りをしたサリンジャー。描写は何気ない日常風景の連続ですが、永遠の青春文学と評価されています。米国のみならず、全世界の若者に与えた影響ははかりしれず、発表以来60年近く経った今でも版を重ねています。しかし読むほどに虚無的で、気持ちが落ち込みます。
主人公ホールデン・コールフィールド(男性16歳)が成績不良で退学になったペンシー高校の寮をでてからニューヨークの街を放浪する3日間の話です。自身の落ちこぼれ意識や疎外感にさいなまれます。インチキが嫌いだが、うそつきで、無垢な妹に問いつめられて語った夢、それは広いライ麦畑で遊んでいる子どもたちが、崖っぷちから落ちそうになったとき、捕まえてあげる、そんな人間になりたい、とやっと前向きな発言をするのです。しかし、やけっぱちで攻撃的な言動、アルコールやたばこの乱用、売春・セックスに対する多くの記述などは退廃的な臭いがします。1950年代のニューヨークですね。

もう一つのトルーマン・カポーティの『ティファニーで朝食を』(1958年)の主人公は女性です。ヘプバーンを楽しく見るだけの映画、とでもいうところでしょうか。
ニューヨークを舞台に、自由奔放に生きるホリーは安アパート暮らしです。彼女の日課は、一流宝石店ティファニーのショー・ウィンドウを見ながら、朝食のクロワッサンを食べること、そしてアパートの窓にすわり、有名になった「ムーンリバー」をうたうのです。著者カポーネは、ヘプバーンの起用には大反対だったといわれています。

そりゃあーそうでしょうね。1950年代、テキサスからNYにあこがれて身ひとつでやってきた娘たちの「自立」を問う小説だったからです。「売春」とまがいの仕事しかない荒廃と繁栄を模索する1950~60年代のマンハッタンで、現実とはかけ離れたジパンシーのガウンをまとい、キュートではあるけれど、強がりで虚言を駆使し、独身女性が、男から金を引き出しながら現実をすり抜けながら生きていく物語なわけですから。
当時のNYは経済的停滞、犯罪率の上昇、人種間対立の高まりに苦しんでいました。ちょうど2人の男女「ホールデン・コールフィールド」も「ホリー・ゴライトリー」もそこに生きていた青春像だと言うことがわかります。最近村上春樹の新訳でこの2冊がでました。私は未だ読めていません。またニューヨークへ行きたくなってきました。(村上春樹訳:『テイファニーで朝食を』新潮社2008、『ライ麦畑でつかまえて』白水社、2003)
関連記事
-
-
「女性と仕事研究所同窓会2019」 Photo集
30の笑顔がはじけて楽しい時間が流れました。2019年5月25日の午後、芦屋市ホ …
-
-
認知症になっても、高齢女性の一人暮らしは可能か(その1)
今売れている2冊を読みました。上野千鶴子さんの『在宅ひとり死のススメ』(文春新書 …
-
-
From ロンドン No.1
パディントンベア 4月1日からロンドンを訪ねました。 滞在7年目の大学生堂山優子 …
-
-
プーチンはロシアの自壊と世界を破滅に向かわせている
プーチン大統領は2022年2月24日にウクライナ侵攻作戦を発動、ロシア軍が対ウク …
-
-
寄りかからず。 立て、立ち上がれ!
詩人の茨木のり子さんは2006年2月17日79歳で亡くなった。大阪市の出身。夫死 …
-
-
ソウル会議がありました
ソウルで開催された「Women’s World‘05」(6/19~24)国際会議 …
-
-
アメリカ報告 第5弾 NPO「E R A」紹介 コロナ後にはNPOのさらなる活躍を!
アメリカはNPO先進国、NPOでの女性の活躍を アメリカは、NPO先進国。建国以 …
-
-
フェミニズムとわたしと油絵(2013~2023)(その10) 世界のジェンダー格差指数、日本、過去最低の125位
「フェミニズと私と油絵」の初校を頑張っています 絵画展でご参加いただいた方に読ん …
-
-
子ども連れ去り事件の増加とハーグ条約
English Japan Times 2011年12月3日記事に関連して 1 …
- PREV
- ブログ復活!
- NEXT
- 再び、NPOと2010年の春 「新しい公共」円卓会議、その後