深い悲しみと炎のなかのラジオ -『母たちの村』を観て
2014/10/23
神田の岩波ホールで『母たちの村』を観た。「アフリカ映画の父」といわれるウスマン・センベーヌ監督は「伝統的であろうが、近代的(衛生的)であろうが、どんな方法であれ、女性性器の切除(割礼)ということは、女性の尊厳や誇りを傷つけるものです。この古き風習を廃止するために戦った母たちへ、この映画を捧げます」といっている。
女児の性器切除という土着の習慣は、アフリカやアラブの多数の国で、19701年代まで封印されてきた事実であった。私自身も1980年・デンマークでの第2回世界女性会議ではじめて知って仰天した。85年の第3回のナイロビ大会では、アフリカ全土にわたって、この施術は「よくない」と結論がでた、という報告があった。しかし、しかし…。イスラム文化圏固有の習慣を西側諸国のフェミズムの圧力でやめられるものではないという意見が大勢であった。まだまだ40カ国あまり900万人もの女性が、一生続く痛みに耐えながら暮らしているのに。お金もなく、ものをいう力もなく…。
映画では、村の幼い少女たちが4人、森へ連れて行かれて、割礼(汚れを浄める儀式)を強制されようとして、「コレ」のところへ逃げてきたところから始まる。コレは第2夫人。自分の苦しみを娘にはさせまいと施術を拒絶して娘は適齢期を迎えている。
「コレ」は、ラジオを通して性器切除をやらなくても結婚できると知る。女たちの友だちはラジオ。情報は女たちから流れ、広がる。しかし村の長老たちは、ラジオこそ、女たちが掟を破るもとになっているとラジオの没収と焼き討ちを決議し実行する。火がつけれ、ラジオの黒い煙がくゆる。その炎に、コレが割礼師たち(女性)から手を離させた不衛生なナイフがくべられる。鞭打ちの拷問に耐えたコレと女性たちの歌声が大きくなる。
女性たちはすばらしい
女性たちは生命を育む
女性たちに敬意捧げよう
アフリカの赤い大地、女性たちの野太い歌声、疲れを知らない踊り、その背中にカンガにくるまれた赤ん坊がいた。
私が「主婦の再就職センター」という行動を開始したのは、ケニアから帰った直後1985年のことだった。
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