肉筆浮世絵展に行きました─5/27大阪市立美術館

   

20150527アメリカ・シカゴの日本美術収集家ロジャー・ウェストン氏(Roger L. Weston:銀行家・シカゴ美術館理事)は、30年にわたり日本美術のコレクションを大成し、2010年には同館日本美術ギャラリーの全面改築を単独支援し、新ギャラリーは「Roger L. and Pamela Weston Wing」と名付けられています。

シカゴ ウェストンコレクション「肉筆浮世絵-美の競艶」公式サイト

特にここ十数年以上かけて、氏が情熱を傾けて収集してきたのが肉筆浮世絵で、個人のコレクションとしては世界有数の規模と質を誇るということです。このコレクションの中から選りすぐりの129点が、このたび初めて日本に里帰りしたのでした。

浮世絵という名称の由来は、今の世の中の諸相を映しだす絵という意味ですが、うきうきとして楽しい浮世の中心は、男女の恋愛、好色の世界です。だから当然、遊女が中心画材になるのです。室町時代に公娼制度が確立し、浮世絵に描かれる対象はだんだん遊女だけになっていきます。江戸時代、女性の地位も下落し、さらに結婚制度の中でも女性の抑圧は強くなりますが、結婚している女性とは逆に、遊女、売春婦に対する激しい嫌悪や賎視が一般化し、固定化していきます。そんななかで、江戸時代末期には遊女の美人画は頂点を迎えます。現実離れしたうりざね顔に細い眼の目鼻立ちや豪華な衣装など、イメージや妄想の果てに描かれた美女たちが勢ぞろいしていました。

肉筆浮世絵というのは、絵師が絹や紙に筆で直接描いたもので、たった一点ものの贅沢品としての浮世絵のことです。私たちが浮世絵と聞くと、歌麿の美人画とか北斎や広重の風景画などの色彩鮮やかな版画のことだと思いますが、このように量産される絵ではなく、たった一点の浮世絵を肉筆浮世絵といって区別します。肉筆浮世絵は一点物ですから、画料を高く設定出来ることや版画の下絵を描く「画工」より、肉筆画を制作する「本絵師」の方が社会的地位が高かったといわれています。

本日は、2時間ほどかけて十分に美しい極彩色の数々を見せてもらいました。しかし女性を描くという点では、ルネサンス時代から始まる西洋画のヌード絵画と同じぐらい現実離れのする違和感を感じました。何重にも重ねたお引きずりの着物や今にも解けそうな重い帯の絵姿は、決してヌードではありませんが、女性は男性絵師により、好き放題、現実的ではない姿で、重ね着をさせれたり、脱がされたりする歴史だったのだと思ったのです。あまり感動はなかったのです。

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