「ジェンダー平等の種を蒔きつづけて・・藤枝澪子の足跡」 出版記念会に参加して
2014/10/23
「おんなの解放をどう闘うか」という視点
去る12月2日、「ジェンダー平等の種を蒔きつづけて・・・藤枝澪子の足跡」(NPO法人グループみこし編・発行)の出版記念会に参加しました。
私自身も藤枝澪子さんの蒔かれた種から少しずつ芽を出し、ここまで歩んできたことを実感しています。1981年春、京都精華大学(当時は短期大学)で藤枝澪子さんの女性学を担当することからフェミニズの真髄に触れていくことになりました。「おんなの解放をどう闘うか」という問いに、自らはどう行動するかを問い詰められるというのがその真髄だったと思います。
藤枝さんは、国際婦人年会議(1975年)に日本政府に対するアンチ・レポートを書こうと集まった編集委員会をまとめるなかで、ご自分の意見として1975年当時の女性解放運動について、以下の5つを課題として挙げています。世界的視野に立った、先駆的で、的確な発言だと感心します。その当時より働く主婦(パート)が専業主婦より大幅に増えましたが、まだまだ女性差別の実態は陰に隠れ、女性の実力不足も相まってかき消されようとさえしています。
①日本の女は、抑圧、差別をなぜこんなに我慢するのか
(産む性が差別の根源にある。しかし封建制と資本制で、家庭の幸せの中では差別が見えにくい)
②女性解放運動(土着型と都市型が分化しないように)
③”パワー”も”リブ”も(広がりと実力をもつために、パワー派が結集し、リブ派にダイナミズムを)
④主婦と働く女との対立的関係
⑤今後の運動の方向 ( 社会的労働への公平な参加こそ )
(p.13「日本における性差別」白書刊行委員会『日本のおんなは発言する』上1975年国連婦人年会議へのアンチ・レポート)
藤枝さんは「先生」と呼ぶことを許しませんでした。その都度、「さん、でいいの」と言い替えされました。それは、それは実践派でした。非常勤と教授、年齢の差などなどを越えるには「さん」がいいの、ということです。藤枝さんの持たれた授業を譲られながら、私は女性学の教員になっていきました。同志社大学の女性学も藤枝さんの後を引き継いだものでした。
女性ヌード絵画研究会
京都精華大学の女性学教員グループで「美術史からの女性学研究―女性ヌード絵画からみる女性の位置」研究会が続きました。そこでの藤枝さんの一言、ひとことは私には毎回、毎回目がさめる思いで藤枝さんのフェミニズムに立ち帰りました。
「どうして画家(描き手)は男性で、ヌードモデル(被写体)は女性なの?」
「どうして女性画家がいないのだろうね。音楽家も同じね」
「 ど うしてスカートなの」
「どうして髪の長い女性が好まれるの?」
「女の身体は、誰のもの?」などなど。
また藤枝さんの英語の文献から得られる情報量の多さ、深さにも感嘆しました。
藤枝さんは研究者でありましたが、本当にすばらしい教育者でした。さらに、実践家でした。ジェンダー平等社会を実現するために地方自治体の担当者とともにNPO法人グループみこしで活躍されたのも、実践派の研究者としての姿を如実に語っているものだと思います。
コミュニティ・カレッジ」の勧め
本著「ジェンダー平等の種を蒔きつづけて・・藤枝澪子の足跡」で、女性の職業訓練について記述で、アメリカの「コミュニティ・カレッジ」を1979年にすでに勧めておられたのを知りました。これも実践派研究者ならではだと思います。
「・・・生涯教育を考えるさい、とかく安易な方向に流れ、型にはまった趣味、娯楽、教養的なものが重視されがちです。地域社会の潜在的名ニーズを掘り起こし、それに応えていく洞察力、先見の明、大胆な企画、体制づくりが必要です。何よりもお金をかけないといけません。安上がりのおためごかしの学習であっては困るのです。その意味では米国で発達しているコミュニティ・カレッジは、大いに研究されてしかるべきだと思います。同時に、単位累積制など、大学教育を弾力化する方向は早急に実現してほしいものです。・・・職業技能教育訓練は、男子と同一の方法及び同一の条件で解放され、それによって雇用・昇進に当たって男女平等の条件をもちうるようにする措置が早急に講じられる必要があります。」(『季刊労働と経済』No.60 1979年京都府労働経済研究所)p.109~110)
2013年になって私がまだいい続けては時代錯誤なのでしょうか。いいえ、そうではないと思って言い続けます。再就職女性に、コミュニティ・カレッジが必要です。まだ就職できていない若者にも、転職希望者にも、失業者にも、大人のしごと学校が身近なところで必要だと思っています。
下写真は1965年~1975年の日本ウーマン・リブ史ⅠⅡⅢの表紙です。
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