『ヴァラドンとユトリロ 母と子の物語』展
シュザンヌ・ヴァラドン(1865~1938)と息子モーリス・ユトリロ(1883~1955)はフランスの画家です。
私はずっとヴァラドンに興味を持ってきましたが、 日本では ユトリロの絵を見る機会はありましたが、彼女の絵はあまり見かけることはありませんでした。
美術史に残る女性画家はきわめて少ないのが事実です。19世紀のヨーロッパでは女性が美術学校に行くことは考えられませんでした。
シュザンヌは1865年、お針子をしていた母の私生児として生まれ、子供時代はお針子として家計を助けました。当時のパリの貧困層の娘たちには職業を持つという選択肢はなきに等しく、彼女はルノアールやロートレックなどの画家のモデルをしていました。そして絵を描き始めます。しかし正式に美術教育を受けていない彼女の絵は、いわゆる遠近法や人間の身体の構造も把握できていない気もします。しかし色彩が斬新で特にみどりや赤(バーミリオン)は鮮やかです。今流行のヘタウマというところでしょうか?
また何人もの画家の愛人になるなど、道徳的ではなかったともいわれます。父親の定かでない子どもユトリロを産み、そしてそのユトリロを母親に預けっぱなしでモデルや絵を描いているなど、「母親にあるまじき」と非難もされています。でも19世紀の閉鎖された女性の生き方を考えると、これが精一杯の頑張りであり、生命の輝きだったと思います。
私はロートレックが描いたヴァラドンのヌードが好きです。強い意志の感じられるまなざしと握りしめたこぶし、強い大きな足が魅力的です。
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