第3回ハッピーキャリア企業表彰【wiwiw賞】審査の講評

      2014/10/23

審査委員長 柏木 宏(大阪市立大学大学院創造都市 教授)

このプログラムは、 2009年度大阪コミュニティ財団の助成を受け、大阪府中小企業家同友会、商業界近畿女性同友会の協力をえて中小企業向けに策定した「ハッピーキャリア」 に関する企業評価基準をベースに、 アンケートや聞き取り調査を実施したうえで、「働きがいのある」企業を選考したものです。「ハッピーキャリア」に関する企業評価基準は、28項目にのぼります。詳しくは、お手元の資料や私どものウェブサイトをご参照ください。審査にあたっては、応募企業の予備審査をへて、選考対象企業を10社に絞り込み、審査を行いました。審査では、人事制度、女性の活躍推進・登用、ワーク・ライフ・バランス、ボランティア・NPOとへの支援や社会貢献についてのアンケートとヒアリングを行いました。審査委員会では中小企業における働きがいを測る指標として次の8つの項目を重視しました。

① すべての項目へのトップの姿勢
② 目に見える形での人事制度の改革
③ 女性の職域の拡大
④ 女性管理職の登用レベルと人数
⑤ 働きやすい職場環境としての残業削減努力
⑥ 育児休暇などがとれる働きやすい職場環境かどうか
⑦ 非正規社員の待遇改善
⑧ 地域との連携や交流

審査委員会では、昨年と同様、選考対象企業を以下の3つの業種に分類することにしました。
A: 従来(あるいは現在も) 男性中心の職場とみなされ、 女性の進出や登用が一般に少ないとみられる業種、
B:性別に関係なく、ITや語学、その他の専門性を生かし、事業を展開している業種
C:顧客の多くが女性で、 女性が女性にサービスを提供する業種です。

この分類に基づき、審査の結果、A、B、Cのそれぞれの業種から1社ずつ選定しました。今年はAとCの分野からハッピーキャリア企業をwiwiw賞受賞企業に選定されました。

Aについては、㈱インターフォワードシステムです。
男性中心といわれる通関・輸送業務でありながら、2002年の創業時に「女性に特化した採用計画」を作り、5年間女性だけの採用を継続、現在では女性管理職(課長以上)を複数登用し、所定外労働の削減やリフレッシュ休暇など導入、セクハラ・パワハラの防止を就業規則に明文化、研修を実施するなどしています。

Cについては、株式会社クラッシーが選ばれました。育児・家事など生活総合サービス支援会社です。同社は、子育ての中で保育サービスの必要性を感じて会社を設立した女性社長の下で、部長職8人中7人が女性、各営業所のトップは全て女性という数字に示されるように女性の登用が大きく進んでいる。育児休業取得者は過去3年で6人。小規模な女性企業への支援や障害児のためのフリースクールのサポートなどでも知られています。

最後に、「働きがいのある」企業とは?についてですが、 新聞等では「ハッピーキャリア」に関する企業評価基準28項目を、「働きやすい」 企業への評価として紹介していることがあります。しかし、このプログラムを考えた立場からいえば、「働きやすい」では職場での女性の姿勢が受動的なニュアンスと感じやすいため、より積極的に会社のなかで活躍していくことができる遭が開けているかどうかについては「働きがいのある」 企業と呼ぶべきではないかと思います。これは、地域連携や社会貢献なども含めた、「働きやすさ」に加え、働いた結果が自分と会社だけでなく、社会にも役立っている、そういう意識をもって働ける職場をこれからの中小企業、日本の雇用の大多数を占める中小企業はつくっていくべきではないか、という考えに立つものです。

今回は第3回目の表彰です。今後、さらにより良いものにしていくために、皆様のご意見、こ感想、ご批判をお寄せいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

ハッピーキャリア審査委員会委員

  • 委員長  柏木宏 大阪市立大学大学院創造都市研究科教授
  • 委員 白石真澄 関西大学政策創造学部教授
  • 委員 広瀬雄樹 積水ハウス株式会社コーポレートコミュニケーション部CSR室長
  • 委員 筒井清子 京都産業大学名誉教授
  • 委員  荻野令子 女性と仕事研究所認定キャリアアドバイザー、ワーク・ライフ・バランスコンサルタント
  • 委員 柴田季彦 株式会社wiwiw
  • 委員 吉村恵 女性と仕事研究所研究員、関西大学非常勤講師
  • 事務局調査担当 NPO法人女性と仕事研究所 金谷千慧子/甲田恭子/仁賀順子/西岡英子/森口ひろみ(株)ファーストアシスト/五十田光宏(中小企業診断士)

 - 女性の活躍

  関連記事

スーチーさんの時代がきた

アウンサンスーチーさんがいつも髪に差している鮮やかな花の髪飾りは、再会することな …

スマートパワー(Smart Power)

スマート・パワーが成功への道 2013年2月1日ヒラリー・クリントン(Hilla …

なんとか、女性活躍の流れを止めたくない!

2015年は1月5日(月)から初仕事という方も多いでしょうね。 いかがお過ごしで …

熱海まで足をのばしました。―MOA美術館とART 2022 OLYMPIA展

東京都美術館での研究会(デッサン研修)を終えて、こだまに乗り換えて40分、熱海に …

母の日

昔、母性神話に悩まされていた。「保育所に預けるなんて、母性というものがない人だ」 …

女性のリーダーシップとアサーティブトレーニング

最近、外資系の女性リーダーシップの研修に参加しようとしたが、結局かなわなかったこ …

アメリカ報告その4 AFTERコロナで経済活動は、もう少し減速修正するだろう

アメリカの新型コロナウイルス感染者数(195万1722人)・死者数(11万771 …

ベティ・フリーダンの思い出

ベティ・フリーダン(Betty Friedan)が亡くなった。85歳の誕生日、2 …

夫の死にあたふた(1~3)女性が働くことを支えた人

夫は戦後の食糧難の時代に育ったにもかかわらず、健康な歯が一本も欠けず最後まで身体 …

公的教育支出、日本は最下位

OECD(経済協力開発機構)は2017年9月12日に、加盟国の教育に関する調査結 …