雛祭りという優しいひびき

      2022/03/24

「おひなさま」には、なんとも言えない懐かしさと優しさが響き合います。女の子だけに特別な待遇をしてもらえるという誇らしさみたいなものもありましたね。小さい頃、お雛様を飾ってもらえるような家(立派な)に生まれたかったなとか、あの小さな食事用のお道具で、どんなものを食べるのだろうかなどと想像しながら、ぼんぼりの明かりに照らされる七段飾りのお人形たちと赤色の緋毛氈(ひもうせん)をあこがれたものでした。
手作りひな
終戦直後の田舎の小学校へ入学した頃、母親はおひなさまの三段目までを千代紙でつくってくれました。1段目はお内裏様の男女一対。京風びなでは向かって左が女性、関東風びなでは右が女性と位置が変わります。それも上位の席が右か左かという解釈の違いはあれ、男性を上位に据えるのです。二段目は三人官女。向かって右側と左側の官女たちは白酒をつぐ道具、中央の官女は杯を載せる三方を持っていて、お祝いの席で、食事の世話をしている様子を表しています。3段目は五人囃子。向かって右から、謡(うたい)、笛、小鼓、大鼓、太鼓を持っています。お内裏様の前で演奏して、結婚式のお祝いをしています。


そんな折り紙で作ったお雛様、とてもうれしかったです。学校にも持って行って、教室でも飾ってくれました。終戦直後のもののないころでしたが、母親の労作は心温まるものでした。
ひなまつりは健やかな女の子の成長を願うものなのだろうか
雛祭りの由来は、時代とともに変化してきました。この中国渡来の節句は、3月3日には、水辺で身を清め穢れを払う習慣があり、日本でも3月3日には穢れ払いの儀式が行われるようになったのがルーツのようです。奈良時代には紙でできた人形(ひとかた)が登場し、平安時代には人形に厄を移して川に流す「流し雛(ながしびな)」も誕生しました。しかし、現在のようなひな人形が宮中の結婚式を模した形になったのは、江戸時代から昭和にかけてだといいます。ひな壇の上位に天皇、皇后の人形を置き、使用人の官女がお祝いの食事の世話をし、五人囃子は楽曲で結婚を祝うという構図になっています。お雛さまにこめる女の子への願いというのは、いったいどんなものなのでしょうか。乳児死亡率の高かった時代は、子どもの健康と長寿は親の願いだったことでしょう。女の子の幸せな結婚も親の願いだったことでしょう。しかし、まるでアファーマティブ・アクション(注1)が江戸時代から昭和の時代にあったとはとても考えられないし、これこそ女性を「結婚」を通して、家族制度・家父長制度へ引き釣り込み、拘束させるという教育手段なのだと思う。

(注1)( affirmative action : positive discrimination ともいう。弱者集団の不利な現状を、歴史的経緯や社会環境に鑑みた上で是正するための改善措置のこと)今世界中で、女性の地位の低さを積極的に解決ようとする政策

お雛さまと日本の家父長制度
家父長制とは父系の家族制度において、家長が絶対的な家長権によって家族員を支配・統率する家族形態のことをいい、またこのような原理に基づく社会の支配形態をいいます。家父長制度の下では、男女の平等はほど遠く、女性差別はきわめて深刻。さらに個人の幸せも犠牲にするものであり、許すことができないことです。人にとって一回だけの人生です。自由と個人の幸せを犠牲にした「家父長的家制度」は最も排除しなければならないものです。
日本の「家父長的家制度」は中世から始まり、近世は武士階層で確立し、明治民法によって全国民 に押し付けられ、さらに「家族的国家観」に発展したのです。戦後は廃止されたとはいえ、まだ まだ社会の根底を築いているものであり、政治構造や企業の組織に根強く存在しています。日本の働く女性の地位が低い(賃金格差、管理職比率の低さなどなど)ことは世界中から幾度も繰り返し改善が求められているのですが、改善するどころか、ますます日本の女性の地位の低さは深刻になりつつあります。
お雛さまの今後
お雛さまは、今後も時代の流れとともに変化していくことでしょう。女の子がお人形に込める思いはいつの時代も、人に対する優しさや温かさなのでしょう。(お人形好きな男の子も)
家父長制度は支配と依存の人間関係が前提になっていますが、これからの家族は、支援と安定の人間関係を維持できることが重要です。家族は愛と支えにより成長していきます。そんな気持ちをはぐくむ「お雛さま」がほしいなー。
以下の写真は、私が娘の1歳の誕生日に贈ったお雛さまです。

 

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