サンフランシスコ報告 その4

      2014/10/23

サンフランシスコの女性センター─Women’s Building

新年おめでとうございます。

今年の年賀状の写真は、昨年9月に訪問しましたサンフランシスコのWomen’s Buildingの正面玄関です。サンフランシスコ報告第4回は、このWomen’s Buildingについてです。

1971年スタート、40年の歴史

Women’s building 玄関左(09年9月10日写)

Women’s building 玄関左(09年9月10日写)

この建物のスタートは1971年です。1960年代のアメリカフェミニズムの流れのなかで、女性と女の子が完全で平等な活躍ができる社会を確立するために必要なツールと資源を提供しようと設立されました。

はじめはサンフランシスコ・ベイエリアの女性のプロジェクトを進める活動が中心で「サンフランシスコ女性センター(SFWC)」といいました。その後活動の拡大とともに、先見の明のある女性たちは1979年に建物を購入し、女性が所有し管理する活動拠点をつくりました。それ以来、このビル(TWB)は170以上の女性の活動組織を生み出してきました。家庭内暴力・性暴力のサバイバーの最初の避難所でありカウンセリングなどの支援もしています。カリフォルニア女性財団、LYRIC(ラベンダーYouth Recreation Informationセンター)や音楽や舞踏の団体支援もしています。1994年に、TWBは広範囲な改造工事をし、7人の女性アーティストによる女性の壁画の完成で、いままで以上に明確なメッセージ性を伝えています。毎年10,000人以上がここでのサービスやトレーニングを受けたり、イベントに出席しています。またここでは女性の運動の歴史も文書化しています。アーカイブはゲイとレスビアンHistory協会が保管しています。閲覧もできます。

20100105_2

20100105_3

この壁画のテーマは【マエストラピース(平和への芸術)】です。女性の力強さと気高さを象徴しています。上の女性はノーベル平和賞を受賞したガテマラのマヤ族のリゴレッタ・メンチェさん。下は次世代の女性を懐胎する「創造の女神」です。両端はカリフォルニア先住民オローニ族の女性です。この壁画を描くT-シャツやノートなども販売しており、活動の資金源にもなっています。

男性を排除するのではなく、包容し、教育するフェミニスト運動の拠点です。この建物、現在はずいぶん周りの木々が生い茂って上の写真ほど全景が見えませんでした。

同じ女性センターとは言え、日本は自治体の施設で、自治体の意向に沿う形で女性の活動が行われているともいえます。これを本当の女性の運動といえるのかは多少疑問です。建物の買取りや改造、所有、運営をやり遂げ、ボードメンバーが経営しながら運動の拠点になり続ける女性の力はたいしたものだと思います。

20100105_4

私たちの講演と交流

このWomen’s Buildingで私たちの講演と交流会が行われました。コミュニティカレッジの在学生や難民のための活動をしている女性、日本の現状に興味を持つ人たちが来てくれました。タイトルは「日本の女性の働く現状―北欧や韓国との比較」でした。金谷は「日本では人口減少が課題だといわれていますが、女性が働くことと子育てが両立できる政策が出現すれば可能だと思う」とか、「女性の再就職や転職、若年者のスキルアップにいわゆるセーフティネットとしてのコミュニティカレッジが必要だ」といいました。甲田は昨年5月訪問した北欧の中でもスウェーデンでは、高いキャリアの女性たちも子育てを楽しんでいると報告しました。

その後の質疑応答で活発な交流ができました。

金谷と甲田の講演内容は下から(PDFファイル)ご覧下さい。

金谷

金谷

甲田

甲田

→金谷
→甲田

 - 海外事情

  関連記事

タリンの花屋さんは染色しているの?もう一度エストニアから。

 IT王国とは、もれない情報網を確立すること 旅の最後は、再びエストニア・タリン …

2015年テロへの不安にSOFT POWER(ソフトパワー)こそ女性のリーダーシップが“カギ”

恒例の今年の漢字は「安」だった。第2位は「爆」第3位は「戦」だという。 その背景 …

アメリカ報告第2弾 なんといっても『Women’s March』!

今回のアメリカ訪問の目的の一つは”Women’s March”に参加することでし …

深い悲しみと炎のなかのラジオ -『母たちの村』を観て

神田の岩波ホールで『母たちの村』を観た。「アフリカ映画の父」といわれるウスマン・ …

女性や少女が置かれている暴力的な状況(新聞報道より)

1 アフガニスタン女性 アフガニスタンで、売春を拒否した若い女性(20 歳)が夫 …

コロナ禍のリーダーシップ (その2 フェミニン・リーダーシップ)

変革の時代に必要なリーダーシップ コロナの時代にリーダーの質が問われています。日 …

中欧の旅 ⑥ 退職カップルのツアーに紛れ込んで─現在夫婦事情

今回のツアーは10組のカップルと母娘3組、家族1組、その他友人同士、一人参加7人 …

今年の風、どこへ向かってー2021年の重大ニュースより

2022年が明けて10日経ちました。コロナウイルスはさらに変異を遂げて拡大中です …

From ロンドン No.2

イギリスのコミュニティカレッジ イギリスのコミュニティカレッジの最大の目標は「職 …

ノルウェイ大使館にアニータさんを訪ねて

東京南麻布のノルウェイ大使館を訪問しました。やっと面会がかなったのです。アニータ …