一人ひとりの働き方、生き方~ディーセント・ワークを目指して
2014/10/23
男女共同参画フォーラム~みえの男と女2010~
「一人ひとりの働き方、生き方~ディーセント・ワークを目指して」
2010年11月13日(土)三重県総合文化センター多目的ホール
昨今の就労問題など「働き方」に大きく課題がある社会情勢を踏まえ、男女共同参画の視点で「働き方」の現状と課題、またこれからに向けて必要な取組について「NPO法人女性と仕事研究所」代表の金谷千慧子さんからお話をいただきました。
ディーセント・ワークとは
「ディーセント」とは「まともな」、「適正な」という意味です。
ディーセント・ワークを目指すということは、働きがいのある人間らしい仕事をしようということです。1990年に国際労働機関(ILO)の総会で、21世紀目標として提言されました。
「ディーセント・ワーク」を実現するために直接的、間接的2つの労働条件があります。直接的とは、適正な労働時間や人間らしい生活を持続的に営める程の賃金があるといったこと。間接的とは、団体交渉や団結権、失業対策等がきちんとしているということです。日本は国際的に遅れている部分があり、ILOの条約に批准していないものもあります。
日本ではディーセント・ワークを実現するために「ワーク・ライフ・バランス」(以下、WLB)の取組を進めています。
なぜ「ワーク・ライフ・バランス」の実現が必要なのか
3年前からはっきりと日本の人口が減少しており、働く人が減少していることは日本の将来にとって大変なことです。この問題から「女性が働いても子どもを産み育てられるような環境を」と言われていますが、第1子を出産した女性のうち約7割は仕事を辞めている状況です。そのため、政府はWLB憲章をつくり、取組を進めています。
WLBの実現には、ポジティブアクション(積極的改善措置)、例えば積極的に女性を上のポジションに登用することや残業や夜の会議は行わないといったアクションが必要です。ダイバーシティ(多様性)の観点も重要です。男性だけではなく、女性、外国人も含めて多様な人材を登用することです。ダイバーシティ、ポジティブアクションを企業内で進めることにより人口減少を食い止めることにもつながると考えます。
男女共同参画フォーラム~みえの男と女2010~
女性の管理職登用、なぜ30%以上必要か
男女ともに仕事も子育ても両立できる社会では、人口減少が止まるということが世界の共通認識となっています。
「女性が発言し行動しやすくするためには、その組織に女性が30%以上いないと実現できない」という理論をハーバード大学のカンター教授が出しています。
管理的職業につく女性を30%にするという政府や自治体の目標がありますが、30%以上が大事です。そうすれば発言力も高まり、意見を言いやすくなりますが、30%未満ではモノを言いにくい、そして逆戻りしてしまうのです。
日本は後位国
女性の力が社会で活用されているのか、政治家や管理職等にどのくらい女性がいるのかという点では、日本が57位(GEM : Gender Empowerment Measure)。また、労働や賃金を中心にした指標では、日本は94位(GEI: Gender Equality Index)。女性が働きたいのに力を発揮できない、最たる国だと思います。
フィリピンや北欧では「子育ては男女で行うもの」という考えがあり、男性の育児休業は当たり前。スウェーデンでは「日本では、どうして女性のほうが、育児休業をたくさんとっているの?それは昇級、昇格に影響するのでは?」との論争も。男性の育児は男性自身の生きやすさ、生きがいをも取り戻すと考えます。
企業での女性の活用
企業におけるWLBへの取組と女性の活用は企業の社会的責任です。「女性の営業職を育てる」「女性研究者を増やす」「WLBへの取組」という経営戦略は企業の利益につながっています。
一人一人に合わせたサービスや商品を作ろうと小回りのきく中小企業はこれからの時代の本当の企業と言われますから、フィーリングを豊かにもっている女性は大いに活躍できると思います。
M字型曲線を描く日本の女性の労働力率
日本の女性の労働力率はM字型曲線を描いています。結婚・出産によって仕事を辞め、M字型曲線の谷に降りると「あとはパートしかない」現状があります。次の専門職やフルタイムの仕事に就くための学校がないのです。日本では、自分で決定して「商売をする」「老後を確立する」といった状況にない女性が多くいます。「夫の転勤」など夫次第となる場合が多く、女性はフラストレーションを抱えていると言います。
それに対し、北欧などの女性はずっと働いています。女性だけが子育てをするという意識はなく、また子どもが生まれたら違う仕事をするという選択肢もあります。そのため、やり直しのきく学校や、仕事をトレーニングする学校があります。大阪市とほぼ同じ人口のニュージーランドには女性の再就職を応援するセンターが25箇所もあり、アメリカには同様の施設が2000箇所もあります。女性のM字型労働を脱却するために、日本でもこのようなコミュニティカレッジがあればと考え、NPO活動をしています。
自分らしい働き方、生き方
一人ひとりが自分で決める生き方、働き方には責任を伴います。自分で決め、収入や権利等を得ることは、アイデンティティを確立し、自分らしく生きることを可能にするのだと思います。
一人ひとりが自分らしく生きることができる男女共同参画社会の実現が必要なのではないでしょうか。
シンポジウム原稿
自ら必要な施設を設置
私は育児期に保育園がなく、無認可保育園を作りました。日本は病児保育や行政保育所が少ない現状です。諸外国では、NPOや民間が運営しているところもあります。
行政に頼り切るのではなく私たち自らが作るという発想で、保育施設やコミュニティ・カレッジを増やしたいと思います。
これからの働き方とマネージメント
これからの働き方で重要なことの一つは、「残業をやめること」。「男女がいきいきと働く企業」三重県知事表彰の選考でも、残業をやめるということのポイントは高いです。残業や労働時間が減らせないと、女性は対抗できません。
私は株式会社の代表取締役、NPOの代表、大学教員等いろいろな働き方をしていますが、NPOの働き方が一番新しいと思います。ヒエラルキーはありません。もちろんトップは金銭的、対外的に全責任を負いますが、みんな対等です。平場のマネジメントといいますか。これからはNPO組織のマネジメント、やり方が役に立つと思っています。
日本ではNPOの成立から10年経ちますが、まだまだボランティアや行政の下請けでなんとか生き延びている現状も見受けられます。そうではなく専門集団として、行政、企業と共に知恵を出し、成り立つシステムを作ることが重要だと思います。
コミュニティカレッジについて
アメリカには2000ものコミュニティカレッジがありますが、これはアメリカの20世紀の最大の発明と言われています。1980年代から設立が進んだことで、M字型曲線がなくなり、障がい者や引きこもりの人、売春婦等もコミュニティカレッジに行き職業選択が広がったのです。授業料は本当に安く一つのコース1000円程度。安価に学び、職業スキルをつけ、職業斡旋までしてくれる。保育所もカウンセラーもおり環境として整っています。
こういったシステムを日本でも政治改革とともにやっていく必要があるのではないでしょうか。
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