母の日
昔、母性神話に悩まされていた。「保育所に預けるなんて、母性というものがない人だ」って何度もいわれた。「母性があれば他人にかわいい我が児を預けることなんかできないはずだ」とも。今では、「保育所落ちた。私は活躍できないじゃないか!」と開き直れる時代になった。いいことだ!
「そうじゃなくて、母親とべったりしていることが母性に満ちた育ち方ではない。多くの人間から刺激や愛情を受けることが乳幼児にだって大切なのだ。母性愛とは別」と言い張ってきた。自分では『母性愛神話』への闘いと位置づけていた。自分が働きたいと思うことと子どもを愛しいと思うことは両立する、と。
しかし粗末な無認可保育所の角を曲がると、両手が自分のものになるという感覚と解放感と同時に、今すぐに子どもをこの手に取り戻したいという衝動で、いつも混乱していた。保母さんなんてやはり信じられない!やっぱり私でなければ、とも。乳児の母親は、他人を信じられない。ふにゃふにゃの赤子を守らねばと思うと他人は敵に見えてくる?。
哺乳類の多くは、子育て中のメスが凶暴になることが知られている。最近の研究でも、人間の母親も母乳の出る時期に攻撃性を増すことが初めて実証されたという。
研究者らは、授乳期の動物は子を守る防衛本能から攻撃性が増し、かつ恐怖を感じにくくなるというデータをもとに、人間も同様であるとの仮説を立てた。母乳育児中の母親17人、ミルク及び離乳食で育児中の母親18人、子どもを持たない女性20人の計45人に対戦型ゲームをする実験をした。研究者が被験者を装い対戦相手となり、わざと感じ悪く敵意むき出しに振る舞った。対戦の勝者は「ざまぁみろ、バーカ!」などの音声が出る「罵倒スイッチ」を押すように指示された。
結果、完全母乳の被験者はスイッチを大音量で長い間押す傾向が認められた。数値にして攻撃性は約2倍。同じ育児中でも、母乳の出ていない母親らの実験結果は子どもを持たない人と変わらなかったという。実験を行ったカリフォルニア大学のHahn-Holebrook博士は「自分や子どもに危害が及ぶ場合には自然と攻撃的になる」と説明している。昔の私も母性神話への対決といいながら、結構、攻撃性や排撃性が強かったのだと今思う。
しかし、今、母性について思うのは、おばあちゃんのというか、おばあちゃんの方が、攻撃的ではない、柔らかな母性本能があるし、とても子ども(孫)には役立つと思うのである。何年か前、乳児の母親だったおばあちゃんに、今、乳児の母親は、そう排撃的にならなくてもいいんだよ。わかっている、わかっている。
アメリカでは1870年、女性参政権運動家ジュリア・ウォード・ハウが、夫や子どもを戦場に送るのを今後絶対に拒否しようと立ち上がり「母の日宣言」(Mother’s Day Proclamation)をだした。また1907年5月12日、アンナ・ジェームス(Anna Jarvis)が、亡き母親を偲び、母が日曜学校の教師をしていた教会で記念会をもち、白いカーネーションを贈った。この2つが重なって日本やアメリカでの母の日の起源となったとされている。その後すべての母親に赤い色のカーネーションを贈るようになったのは最近のことだと思う。ほぼすべて世界各国(イスラム圏も含めて)母の日は存在し、5月の第2日曜日が30カ国と最も多い。
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